第2章 忘却と願い
ア「水分を取り少し落ち着かれたところです。しのぶ様」
(アオイ…?しのぶ…?)
し「あぁ、よかったです。…初めまして、私は胡蝶しのぶと申します。なんとお呼びしたらいいでしょうか?」
ふわりと花の香りがした瞬間、紫の瞳の女性が微笑みながら覗き込んできた。
「…水橋…水橋 月奈です…」
微笑むしのぶから目が離せないまま、名前を伝える。
しのぶは更に微笑み、優しく月奈の頭を撫でた。
し「月奈さん、まだ体が辛いでしょう。貴女はここに運び込まれてから3日間眠っていましたから…」
「…3日…?…っ」
そんなに?と口が話すより先に、頭痛がくる。
し「すみません、起きたばかりでしたね。ゆっくりと体を休めてください。また来ますね」
何かを隠された気がしたが、優しい手で頭を撫でられた月奈は、眠気に抗えず落ちていった。