第2章 忘却と願い
?「ゆっくりで大丈夫ですので、気を付けて飲んでください」
そう言うと、女性はまだ力の入らない体を支えるように背中に手を当て、月奈の上半身を起こす。
口に水差しを当てられ、ゆっくりと飲み込む。
ぬるめの水が喉を流れていく感覚に、月奈はホッと息をつく。自然と体の強張りが緩んだのを感じ取った女性は、再度ベッドへと月奈の体を横たえる。
「ありが…とう…」
少し潤った喉から発せられた声に、
?「いえ、患者さんへの対応は私の仕事ですので」
ハキハキと返す女性の顔は心なしか穏やかになっている気がする。
ーコンコン…
??「アオイ?少女の様子はどうでしょうか?」
扉のノック音とともに軽やかな鈴のような声が聞こえてくる。アオイと呼ばれた女性は、月奈の視界から消えるとともに扉が開く音がした。
どうやら、もう一人女性が部屋に入ってきたようだ。