第6章 迷いと決意
煉「君は本当に大人しく寝ていることが出来ないのだな」
「…すみません」
声をかけられ、苦笑する。
風に当たりたかったので。と答えると杏寿郎が横に腰を下ろす。
「サラシありがとうございます。しっかり止血されているようで、お布団を汚さずに眠れました!」
ニコリと笑って御礼を述べた月奈を見て、杏寿郎は眉根を寄せる。その表情に月奈は苦笑した。
「まだ怒っていらっしゃるのですね。…父君、槇寿郎様も私の鬼殺隊入隊を反対されました、もう聞いておられるかと思いますが」
煉「当然だ。反対するに決まっている。月奈はそれでも入隊を諦めないつもりか?」
もちろんです。と月奈はゆっくりと首を縦に振った。
杏寿郎はピクリと眉を動かす。
「死に急ぐつもりはありませんよ。杏寿郎様が幸せに生きて欲しいと願ってくださったのですから、幸せになる道を模索したいと思います」
煉「そうだ、君の幸せを願っているのにどうして鬼殺隊を選ぶんだ。その道だけは違う、他に目を向けろ」
「鬼殺隊の隊士は己の身を守ることができるでしょう。それに人を守る力まで持っている。私の血で犠牲になる確率は低いではありませんか」
煉「人里に戻れば、今まで通りの生活がある。鬼は鬼殺隊が滅する、君の元には鬼は現れない。もちろんお館様も何らかの手を施すだろう」
「人里に戻る?私は人殺しになどなりたくはありません。それに人里で私が死んだとして、鬼を呼び血肉を喰われれば力を与えてしまうのですよ。…稀血に行く場所など、幸せな場所など有りはしないのです!」
吐き捨てるように言い放つ月奈は拳が震える。
いっそ殺して欲しいと思いながら、それでも生きたいという思いを残している自分に吐き気がした。
煉「では君は…入隊を認められなければ、自害でもするつもりか?」
「家族を殺したも同然の命ですから、これ以上周囲を危険に晒して生きていくくらいなら…と思っております」