第6章 迷いと決意
どれくらい眠っていたのだろうか。
ふと目を覚ました月奈は、胸元を確認する。
血の滲み具合から察するにそれ程時間は経っていないようだ。
(サラシの交換されていなければ、だけど…手ぬぐいを剥がす時の痛みは感じていない)
部屋を見回すも誰もいない。行灯の明かりが心を落ち着けてくれる。
静かな空間で月奈は、槇寿郎の言葉を思い出す。
「よく考えろ、か」
もしかすると、月奈の中の相反する気持ちに気付いているのかもしれない。
鬼殺隊に入って、助けてもらった恩返しがしたいという気持ちに嘘はない。自分が役に立つかなんてわからないけれど。
それとは反対に、自分の稀血が引き寄せる鬼で誰かが死ぬかもしれない。
隊士達を危険に晒すくらいなら、一人でひっそりとどこかで生きていくほうがいい。でも、本当に一人になること、誰も知らない場所で命が尽きることを考えると怖い。
「矛盾ばかり…我ながら呆れる」
お館様はどのように判断されるのだろうか。
鬼殺隊に入隊出来るならば、身を粉にして尽くそう。たとえ稀血の囮として死のうとも、誰かを守れるのならばそれでいい。
入隊が出来なければ…人里に戻されるのだろう。でもそこには必ず鬼が来る。
(それで人が死んだとしたら、私は人殺し。そんな風に生きるくらいなら、人里に戻る前に自害しよう)
そうなると、鬼に喰われる前に自分の遺体を処理をしてもらわなければいけない。鬼が強くなる為の養分になるなんてまっぴら御免だ。いっそこの血が鬼を殺せるならば喜んで喰われるのに。
ギュッと目を閉じて深呼吸する。
(気が昂ってしまった…落ち着こう)
起き上がり、廊下に続く襖を開けるとヒヤリとした空気を肌で感じる。
縁側に腰を下ろして空を見上げると、星が綺麗に見える。
寝静まる時間なのだろう、とても静かな夜だ。
「こんな穏やかな夜が続けばいいのに」
きっと今日もどこかで隊士達は鬼を倒すために任務に赴いている。
もしかしたら命を落とす隊士も居るかもしれない。
(町や村の人間が襲われているかもしれない…)
ゾクリと悪寒に襲われ、両腕で肩を抱く。