第2章 忘却と願い
熱い
痛い
苦しい
「ぅ…ぐぅ…っ」
月奈は唇をかみしめ大粒の汗を流していた。
眉間に深い皺を刻み、ただただ呻いていた。
「…っあぁぁぁぁぁああ!!!!」
傍に控えていた人物が、月奈の汗を拭おうとした瞬間だった。月奈はビクリと体を震わし叫び声をあげながら目を開いた。
見知らぬ天井が広がっている。どうやらどこかに寝かされているようだと気付くが、周囲を確認したくても体が動かない。
「…はっ、…はっ…っ…」
荒い呼吸を繰り返し、視線だけを彷徨わせる。
?「目覚めましたか…落ち着いて深呼吸してください」
突然聞こえた声に月奈はビクリと肩を震わせる。
次いで視界に入ったのは青い瞳。眉をキリッと上げ、黒髪の二つ結びが印象的な女性だった。
月奈の顔を覗き込みながら、テキパキと汗を拭っていく。
?「水を飲まれますか?」
女性は床頭台に置かれた水差しを手に取り、視線を動かすだけの月奈に見えるように差し出す。
「飲みたい…です…」
自分の発した声に驚いた。声は掠れ、口内は乾き唇もカサカサになっている。