第6章 迷いと決意
(あぁ…気まずい…)
どちらかというと月奈は体を見られた張本人なので、気を遣うのは煉獄家側なのだが、礼儀を考えれば厄介になる身で一番風呂に入ったのが悪いのだ。まして、ご当主様に挨拶もなく、無礼千万。
敷居を跨ぎ、部屋に入ると真正面にご当主様、その両脇に兄弟が控えるように座っている。
月奈は入口から一歩進みその場に正座すると、頭を下げる。
「この度は度重なるご無礼を働いたこと、申し訳ありません。ご当主様とお見受け致します。私は水橋 月奈と申します。本日はご子息のご厚意により、こちらで一泊ご厄介になる予定でありましたが…その…このようなことになるとは…」
?「月奈さん…こちらこそ、申し訳なかった…。俺は、煉獄槇寿郎、この子らの父親だ。…男所帯になってから長いものでな、女性がこの屋敷に居るとは思わんくてな…」
「…槇寿郎様、私はこの通り少し体を休めることができましたので、当初の予定通り蝶屋敷に戻ろうかと考えております、これ以上ご迷惑をお掛けするわけには参りません」
え?と3人の揃った声が聞こえ、月奈は顔を上げた。
槇寿郎は杏寿郎を見、杏寿郎は月奈を見、千寿郎までもが月奈を見ていた。
(この一家目力強いなぁ…何か悪いこと言ったかな…)
煉「月奈、君は稀血でありこのような時間から出歩くなど言語道断だと分かっているだろう。先ほども鬼にケガを負わされているのだ」
槇「…話は杏寿郎から聞いている。迷惑だとかそういう類ではなくてだな…」
千「月奈さんが男所帯の中に居るのが嫌というお話であれば、引き留めはできませんよ。父上、兄上。帰られるのならば、兄上の他にどなたかお呼びすることも可能では?」
(そういえば、私が蝶屋敷に戻るとなれば、他の隊士に護衛をして貰う必要があるのね?煉獄様は自宅に戻ってこられたばかりですし…)
「あの…千寿郎さんの言ったこと、全く考えていませんでした。煉獄様…杏寿郎様にこれ以上無理していただく訳にもいきませんし、他の隊士に送迎していただくような身分不相応なことはちょっと…。やはり明日、ここを発ちたいと思います。一泊ご厄介になってもよろしいでしょうか…」
すみません…と月奈は再度頭を下げた。