第6章 迷いと決意
居間でお茶を飲んでいた煉獄は、突然の叫び声にお茶を噴き出し、脇に座っていた千寿郎はビクリと肩を揺らした。
今の声は…と二人は顔を見合わせ、その場に向かう。
煉「月奈!?大丈夫か!!」
千「兄上!湯殿には入ってはいけません!」
?「うぉわっ!!?なんだお前達!!?この女は誰だ!!?」
(あぁ…もうお嫁に行けません…)
タオルで体を隠してはいるものの、全身を真っ赤にして涙目になっている月奈を見て、兄弟はビタリと動きを止める。
千「父上!!どうしてこちらに!?」
煉「…よもや…月奈、もう少し湯に浸かってくるといい。すまん」
月奈に羽織をかけてから、父上と呼ばれた人物を連れて男達は湯殿から出て行った。
フラフラとした足取りで再び湯舟に戻った月奈は、羽織をかけられていることを思い出し、慌てて脱衣所に行き濡れていないか確認する。
(良かった、濡れて居たら任務の時に羽織っていけなくなるもの…)
この状況で悠長に湯に浸かるなどできない、のぼせてしまったらまた迷惑をかけてしまう。
そう思い、千寿郎が準備してくれていた浴衣を手早く身に着け廊下へと出た。
(あれ、そういえば…皆さんどこにいらっしゃるのか聞いてない。どうしよう…)
キョロキョロと辺りを確認し、とりあえず玄関とは逆方向へ進んでいく。少し歩くと光が漏れている1室があり3人の声が聞こえた。
?「俺は聞いていなかったぞ!聞いていればそもそも部屋を出なかった」
煉「鴉は飛ばしました!」
千「父上、ともかく月奈さんが来られましたら、一度謝られたほうがよろしいのでは…」
ぐぬぅ…と呻く声は恐らくご当主様だろうな…
ご当主に貧相な体を見せてしまい、逆に月奈が謝りたい気持ちだ。
「あの…失礼してもよろしいでしょうか?」
意を決して月奈は廊下に座り、室内の3人に声をかけた。スラッと襖が開き、千寿郎が少し目を逸らしながら入室を促してくれた。