第5章 お館様
し「月奈、目隠しを外しますよ」
サラリ…と目隠しを外され、足を下ろされた。
砂利を踏む感覚に、ゆっくりと目を開くととても綺麗に手入れされた庭に立っていることが分かった。
?「ようこそいらっしゃいました水橋 月奈さん」
ハッと声に気付いて、目の前に視線を戻すと、綺麗な女性が立っていた。
煉「あまね様、ご息災で何よりです」
煉獄としのぶは跪いて頭を垂れている。
月奈は一瞬の出来事に驚き、慌てて正座をして頭を下げようとした…その前にあまねと呼ばれた女性に止められた。
あ「月奈さん、そのままで大丈夫です。柱のお二人も、私に気遣いは無用ですよ。ついてきてください」
そう言うと、屋敷の一室に案内される。
屏風が上座に配置されており、下座に座布団が三つ置かれている。前列の座布団は一つ、月奈が前列に促され、後列の二つにしのぶと煉獄がそれぞれ座る。
お待ちください、と部屋を出て行ったあまねは、お館様を呼びに行ったのだろう。
(どうしよう…あまね様は奥方様だろうか。失礼を働いてしまった。二人に先に聞いておけば良かったのに…)
月奈はすでに緊張に呑まれ、汗が止まらない。
呼吸が浅くなっていることに気付いたしのぶは、小さな声で声をかける。
し「月奈、大丈夫ですよ。落ち着いて、あまね様は奥方様です」
「…はい…」
(どうしよう…話したいことがあったのに…私の望みなんて恐れ多くてお話できないかもしれない…)
煉「…深呼吸をしなさい。お館様もあまね様もお優しい方だ。自分の思いを話せば聞いてくださる」
静かに背中を撫でられ、少しずつ呼吸が整う。
後ろには二人がいてくれる。簪で元気を貰ったことを思い出す。
「…二人ともありがとうございます。自分の人生が決まるのが少し怖いのです。でも、自分の望みは自分で言わなければいけませんよね」
ふー、と少し長めに息を吐いて背筋を伸ばす。