第5章 お館様
(嬉しいけど…私自身はワクワクもしているって言ったら怒られちゃうかな)
座敷に入ると、しのぶ・カナヲ・3人の女の子が既に座っていた。
3人の女の子は、主に機能回復の訓練や日常の家事等サポート役で働いている。きよちゃん・なほちゃん・すみちゃんの3人はいつも一緒にいることが多くて息ピッタリなところがとても可愛い。
アオイと月奈も座り、皆で朝食を食べてからはいつも通り各々の仕事に入る。
月奈はただの居候なので、アオイの担当している洗い物を手伝っていた。
ア「月奈、今日はお館様とお会いするのよね。緊張してる?」
「緊張はありますね…皆さんが敬意を払っているお方ですから。でも、私とお話をしようとしてくださるくらいだから、きっと大丈夫だと思ってます。…たとえお館様が私をどのように判断されたとしても、ここで皆に優しくして頂いたことは忘れません」
お皿を洗うアオイの横でお皿を拭く月奈はすっきりとした表情をしている。
そう、それならいいわ。と呟いて水を止める。
「でも、いつでも蝶屋敷に顔を出してね。皆月奈を心配しているんだから」
腰に手を当ててキリッと言い切るアオイに、月奈は頬が緩んだ。
午後になり、煉獄が今から蝶屋敷に向かうと鴉がしのぶの元に言いに来ていた。
月奈は身だしなみの最終確認をしていると、ふと昨日後藤から受け取った箱が床頭台に置いたままであることを思い出した。
「結局、誰からの預かり品なのかは教えて貰えなかったな~…あれ?これって…」
箱を開けると、中には見覚えのある簪が入っていた。
昨日、呉服屋で見ていた簪だ。月奈は贈ってくれた人物がすぐに誰だか分かってしまった。