第4章 行く先
「ありがとうございます!ところで、随分賑やかですが、どうしたんですか?」
後藤の横には、微笑みを崩さないカナヲが立っていた。
「あ!カナヲちゃん。袴貸してくれてありがとう、動きやすくて助かりました」
今身に着けている桃色の着物に紺の袴は、カナヲの物だ。身長が160cmと女性の平均身長より高い月奈に合う衣類が無く、なんとか着ることができたカナヲの袴を借りていた。
明日から、外出の時には着物が2つあるので困ることはなさそうで一安心している。
カ「大丈夫、それなら良かった」
後「普通に喋れるなら最初からそうしてくれよ、継子様よぉ…」
どうやら、カナヲに話しかけたが反応がなかったため困っていたようだ。
「何か話があったの?」
そうそう、と手のひらを拳でポンと叩いて後藤は背負っていたリュックから縦長の箱を出した。道中で頼まれた物だと月奈の手にその箱を乗せる。
後「いつ帰ってくるか聞いても分からないし、かといってずっとここに居るのも嫌だし、でも水橋に渡してくれって預かったものだったから困ってたんだよ」
「何が入ってるんだろう…ありがとう後藤さん!荷物だけお願いして屋敷に先に戻ってもらったから迷惑おかけしてしまって…すみません」
隠のお仕事も大変だなぁと思い、頭を下げる。
ところで、誰からですか?という問いには後藤はピタリと黙ってしまった。
カ「師範!お帰りなさい」
し「カナヲ、月奈に買ってきた着物を一緒に片付けて貰えますか。月奈、シワにならないように衣紋掛けにかけておいてくださいね」
は~いと返事して、柄や色に関して嬉しそうに話しながら2人は連れ立って病室へ歩いて行った。
しのぶは、その後ろ姿を見届けてから、庭にいる後藤に目を向ける。