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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第4章 行く先




し「後藤さん、荷物の配達ありがとうございました」

ニコリと微笑んだしのぶに、後藤は「いえ」と短く答える。既に姿勢は膝をついて頭を下げている。
ただ…と一言しのぶが発すると、後藤の肩がピクリと動く。
冷や汗がタラリと首を伝っていく。

し「あの小箱、中身は何なんでしょうか。大きさから予想すると中身は…」

後「胡蝶様、自分は頼まれたものを運んだだけで中身までは存じておりません」

し「そうですか。それもそうですね。では、質問を変えましょう…」

ー誰に依頼されましたか?

後「それは…申し訳ありません。ご容赦ください、守秘義務がありますので」

スゥとしのぶの目が細められる。

ー顔が上げられない。目が合ったら終わりだ。間違いなく黙秘権は使えない。
隠の後藤は、柱である人間の恐ろしさを知っている。ポタリ、と庭の砂利に汗が落ちていく。
ふぅ、としのぶは息をついた。

し「後藤さんに聞いても仕方のないお話のようですね。すみませんでした、なんだか冷や汗がすごいですね。どうぞ使ってください」

声のトーンが穏やかに戻ったことに気付き顔を上げた後藤の前には、先ほどまで縁側にいたしのぶが間近で自分を見つめている。その手にはハンカチがある。

後「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます、失礼致します」

素早く頭を下げると、まるで逃げるように後藤は姿を消した。
恐がらせちゃいましたか、と苦笑いをしてハンカチを袂に仕舞う。

し「無意識ながら…でしょうか、やってくれますね。煉獄さん…」

多分、最後の呉服屋で月奈が見ていた簪だろう。店から出てくるのが遅かったのできっと購入していたのだ。
簪や櫛を贈るという意味を分かっているのだろうか。明治の時代には双方ともが結婚の申し込みの意味を持っていたと聞く。大正時代の今では、櫛だけに意味合いが残っているように思うが、歴史を知れば簪もまた同じと分かる。

ー月奈が気付かなければそれで良いのですが…

ゆっくりと空を仰いでから、着物の片付けをしているであろう病室に向かった。
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