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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第26章 居場所



玄関で草鞋を脱いでいた杏寿郎はその声に驚いたように振り返った。普段は千寿郎が出迎えてくれることが多い為だろう、月奈は思わず苦笑してしまった。

(ここ暫く蝶屋敷での仕事の為に見送りも出迎えもできていなかったものね)

煉「起きていたのか。千寿郎に要を飛ばしたはずだが…」

月奈の肩で羽を休める要を見つけた杏寿郎は、そこまで言いかけて「なるほど」と一人頷いた。

煉「頬が冷えている、こんな時間外に出ていたのか?」

「たまたま縁側に出たところで要が飛んできました。今日はしのぶさんからお暇を頂いたので夜更かししてしまいました」

頬に触れる少し冷えた杏寿郎の手に熱を移すように手を重ねる。日中にしのぶと話したことを思い出し、無事に帰って来る姿を見たかったから起きていたというのが正しいがそれは言わない。

(なんの根拠もないただの想像だもの、起きるかも分からない嵐に不安を持ったって仕方ないわよね)

煉「月奈、どうかしたか?」

「いえ。今日も何事も無く戻られたようで安心しました」

煉「そうか!最近は鬼も大人しいものでな、比較的怪我人も少なく任務が完了している!」

そう言った杏寿郎も少し違和感を感じているのか表情が硬い。しかし月奈と目が合えば普段通りに笑って見せる。

(心配させないようにしてくれている。もしかして、何故私が今ここに居るのか気付いたのかもしれない)

「それは喜ばしいことです。では今日も蝶屋敷は静かなのでしょうね」

煉「眠れないのならば少し付き合ってくれるか?」

突然の申し出に「?」という表情をしたまま頷いた月奈にニコリと微笑んだ杏寿郎は月奈の手を引いてとある場所へと案内した。

「庭?」

煉「今日は月が綺麗でな、眠れないならば少し月見でもしようか」

そう言った杏寿郎の手にはお酒…ならぬ、白湯が入った湯呑みがお盆にのせられている。途中台所で火にかけたままのやかんを思い出した月奈に「ちょうど良い」と言った意味がここで分かる。

「なるほど。それはいいですね、是非お供させてください」

煉「夜明けが近い、月見と言っても少しの時間だけだがな」

藍色に変わっていく空を見上げながら杏寿郎は少し笑う。それでも、せっかく出来た時間だからと縁側に腰掛け二人はゆっくりとした時間を過ごす。
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