第26章 居場所
決意を話してから数日。月奈は蝶屋敷でしのぶ達の手伝いをしながらも、鍛錬は欠かさずに日々を過ごしていた。退院した杏寿郎は柱として相変わらず任務に忙しく、それでも時間があれば家族や月奈と過ごす時間を大切にしてくれる。
し「月奈、今日はもう帰宅しても大丈夫ですよ。怪我の酷い隊士も今日はいませんし、明日はゆっくり休んでください」
声をかけられた月奈が畳んでいた洗濯物から視線を上げた。
し「もう終わりそうですね、いつもありがとうございます」
「ちょうど今しがた終わりました!…そういえばここ暫く怪我で運び込まれる隊士が少ないですね」
本来であれば喜ばしいこと。しかし月奈の中で何かが引っ掛かっている。それはしのぶも同じなのだろう、心から喜ばしいとは言えない表情をしていた。
(鬼殺隊の活躍による鬼の減少、もしくは鬼殺隊士の力量が全体的に向上している、とも考えられるけれど)
し「…嵐の前の静けさ…でしょうか」
ポツリと呟いたしのぶは、月奈にニコリと微笑むとゆっくりと首を振り「考えるのはやめましょう」と言った。確かに考えても仕方のない事、「まさか」なんてことは起きないかもしれないのだ。
し「煉獄さんは今日の任務が終われば、明日は休暇でしょう?どこかに行かれるのですか?」
「いえ、今のところは特に予定はありません。退院されてから任務続きでしたから、ゆっくり過ごされる…いえ鍛錬して過ごされるのでは?」
ゆっくり過ごす=自宅で鍛錬。杏寿郎が堕落したように過ごす姿を想像してみたが、結局最後は鍛錬している姿が目に浮かんでしまい苦笑した月奈。それを見たしのぶは眉根を寄せて「それは…」と呟く。
し「月奈がこちらに戻ってから煉獄さんとどこかに出掛けたりしましたか?」
「お出掛けですか?たまに千寿郎さんのお遣いで街に行ったりしてますよ。私一人でもお遣いできるのに千寿郎さんが誰かと行くようにって」
月奈の返答に、しのぶは眉根の皺を伸ばすように揉んで溜息をついた。およそ恋人のような休日の過ごし方ではない二人に頭痛がしてきたのだ。紆余曲折あって結ばれた二人、それを知っているからこそ「もっとゆっくり過ごせばいいのに」と周囲は思っているが当の二人は任務に仕事に忙しく日常を過ごしている。