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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第26章 居場所



実「この”提案”は胡蝶や煉獄も悩んだんだろうなァ。俺からすれば、大事な人間が戦いの可能性がある場に居ることすら許せねェ」

遠い目で空を見上げている実弥の表情は、座っている月奈からはよく見えない。けれど、声音は悲しくなるほどに優しいと分かる。誰を思い浮かべて話しているのだろうか…

実「月奈の気持ちを尊重したいって二人の気持ちもあるが故の矛盾だ、だからこそ月奈がしたいようにすればいいと俺は思うけどなァ」

「でも、私がここを手伝う中で鬼殺隊に戻りたいという気持ちになったら”提案”に後悔するのでは?」

結局のところ、月奈が蝶屋敷で働くことに迷う理由はそこなのだ。戻れないと分かっている、理解しているようで胸中は諦めきれない気持ちが欠片ではあるが残っている自覚はある。蝶屋敷で鬼殺隊と関わりを持てば、その気持ちが膨らんでしまうのではないか。

「迷惑や心配をかけたくて戻ってきたわけじゃないんです」

実「戻りたい気持ちが出て来た時の事なんて、そうなってみて初めて考える事だろォ。それに、皆言うと思うぞ」

何を?と首を傾げた月奈の頭に優しく手を乗せた実弥はニヤリと笑った。

実「戻ることは許さん、ってなァ」

(それは確実に言われるんだろうなぁ…というか既に言われてる)

「そうでしょうね…」

実「その気持ちが出て来た時には周りに言えばいい、諫めることはあっても後悔なんざ誰もしねぇよォ」

そうなることも覚悟の上での提案だァ、と言って頭をポンポンと叩く実弥に少しだけ悩みが軽くなった気がした月奈は微笑む。兄のように慕う実弥が言うのだ、本当に皆がそう思っている気がしてきた。

実「戻りたいって言う我儘以外は可愛いもんだァ。それすら聞けなかった期間を考えれば、直接聞いて話せる今がどれほど大事で貴重か…」

(そうだ、今はもう向かい合って話せるんだわ)

見ざる言わざる聞かざる、そんな言葉がぴたりと嵌まるような日々を過ごした頃を思い出せば、今がなんと幸せなのか。そして、周りが与えてくれる機会をフイにしようとしているのか気付く。

縁側から立ち上がった月奈の表情は、何かが吹っ切れたように晴れやかだ。その表情を見て実弥は「言いたい事はしっかり口に出せ」と呟くと背中を軽く押した。
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