第4章 行く先
??「じゃあ、茶屋にとりあえず…」
入ろうか、と言いかけたもう一人の男性が突然地面に抑えつけられたと同時に、肩を抱いた男の腕は月奈に捻りあげられていた。
煉「よもや、一時離れただけでこんなことになっているとは」
「煉獄様!?…申し訳ありません。助かりました」
背中に手を捻りあげられている男は呻き、地面に抑えつけられた男に至っては失神している。
?「離…せよ…!」
「あぁ、すみません。大丈夫ですか?」
そう言って手を離すと、男は前のめりに倒れこんだ。
チッと舌打ちして睨み付けてくる男に、月奈は微笑んで言い放った。
「気を失った方を連れて早く去ったほうがよろしいのでは?周りが見てますよ。それに…」
ー警察に差し出されたくはないでしょう、と付け足すと青ざめて去っていった。
煉「水橋少女は体術を学んでいたのか?随分と落ち着いていたな!」
「えぇ、稀血ということもありましたし、少しでも危険を回避できるようにと両親が師をつけてくださいました。まぁ、鬼相手に通用するはずもないのですが、まさかこんな形で役立つとは…無駄ではなかったですね」
ふふふと笑って、乱れた髪を直す。胸辺りまで伸びた癖のない黒髪は、触り心地が良さそうだ。
じぃっと煉獄は見つめると、手を伸ばしてひと房掬い取った。
し「…煉獄さん、月奈、お待たせしました」
「しのぶさん、目的の薬品はありましたか?」
しのぶの声がして、煉獄はハッと髪から手を離す。どうやら月奈は気付いていないようで、しのぶに駆け寄って行った。
し「えぇ、なんとか全部揃いました。さぁ帰りましょうか」
月奈越しにしのぶの視線を感じて、煉獄は冷や汗が流れる。
自身の行動に驚いたのももちろんだが、なによりしのぶの目が怖い。
帰り道は、煉獄が買った団子を食べながら歩いていたが、随分と静かな煉獄が気になった。