第26章 居場所
以前の月奈であればもっと悟られないように自分の気持ちを封じ込んでいただろう。断りの言葉も誰かが遮る余地など与えなかったはずだ。
し「確かに、断る場面で言葉に詰まっていましたね。だからこそ煉獄さんが考える時間を与えることが出来ましたし」
宇「鬼殺隊に戻りたいと思っているからこそ言葉に詰まったとしたら、戻らせたくない人間が断る月奈を止めるのはおかしくないか?」
鬼殺隊に戻ることは許さないと言った時の月奈の表情を思い出すと杏寿郎は「そこなんだが…」と呟き、天元に視線を向けた。視線を向けられた天元は、なんだよ?と言いた気に眉を上げる。
煉「戻らせるつもりはないが、俺が鬼殺隊に居る限り完全に関わりを断つことは無理だろう。かといって大人しくしていろといって言う事を聞く女でもあるまい?」
宇「あぁ、だからこそ鬼殺隊に戻るって言い兼ねないって話で…」
煉「鬼殺隊でなくとも、宇髄の奥方達のように支えになっている人間もいる。蝶屋敷にも鬼殺隊ではないが手伝いをしている子たちがいる」
そこまで言えば、勘の良い天元は杏寿郎としのぶが月奈に何を提案したのか分かったのだろう。少し複雑そうな表情で頭をワシワシとかいた。
宇「…ちょっと酷じゃねぇのか?俺の嫁達は初めから線引きをしてるから問題は無いし、蝶屋敷で働くあの子供達も鬼殺隊に縁はあっても入隊しているわけじゃない。自分の居場所を把握しているから不満も無いだろ」
し「…鬼舞辻と戦うことになった場合蝶屋敷を守れる人間は今の所居ません。ですが、薬品や病床が揃う蝶屋敷は治療の拠点となるはずです」
煉「鬼殺隊に戻ることは叶わずとも何か手伝いたいという月奈の気持ちと、胡蝶が懸念する蝶屋敷の守り。その両方が叶うとは思わないか」
大きな戦いになれば運び込まれる人間も多くなるだろう、その時に何もせず家に居ることが出来るとは思えない。しかし鬼殺隊でもない人間が戦いに参戦など無理な話。
宇「なるほどな、ただ祈っているなんてあいつが嫌がるのは明白だしな。鬼舞辻無惨と戦う時、そこら中に存在する鬼が集結すれば一気に片付けられるだろうがこっちの都合で動いてくれるはずも無い」
煉「一番良いのは、父上と千寿郎が居る家で守られることなんだがな…」