第26章 居場所
し「煉獄さんが退院してからも私が月奈を独り占めしても良かったのでしょうか?てっきり煉獄さんは月奈を一刻も早く囲い込みたいのではないかと思ったのですが…」
千「…囲い込み…」
しのぶのあけすけな物言いに千寿郎は苦笑したが、概ね考え方は同じだったため何も言わず杏寿郎へと視線を向ける。目をパチパチと瞬かせた杏寿郎は次の瞬間声を上げて笑った。
煉「囲い込みか!それは確かにな!しかしそれを月奈が受け入れるとは思うまい。…まだ鬼殺隊へ戻りたい気持ちがあるんじゃないか、月奈」
え?と声を上げた二人は、杏寿郎の視線が病室の扉に向いていることに気付き慌てて振り返る。そこには手拭と湯の入った桶を抱えた月奈が驚いた表情で立っていた、どうやらたまたま部屋に入ってきたところで話しかけられて驚いたようだ。
「戻りたい気持ち…無いといえば嘘になりますが、だからといって鬼殺隊に戻ることは出来ないと分かっています。でも…関わりを許されるならば少しでも鬼殺のお手伝いが出来たら良いな、なんて思います」
鬼殺隊に入る時にも言っていた。恩返しがしたい、と。その気持ちに一切の変わりが無いことに月奈自身は驚き、また呆れた。
ー鬼殺隊と無関係でいるべきだと思っていたけれど、関わることを全然諦めきれてないのね。悔恨なのか未練なのかは分からないけれど…。
言葉にして改めて自分の気持ちを知った月奈に、三人の視線が集まる。なんだか自分の未練を見透かされるような気がして居心地が悪い月奈は、慌てて床頭台に湯桶を置くと手拭いを湯に浸して絞る。
自ずから抜けた鬼殺隊にまた戻りたいなど、そんなこと言えるはずもないし言うつもりもない。自分勝手な都合で鬼殺隊を振り回す事など二度としたくはない。手拭いを絞る手に自然と力がこもる。
「だからと言って戻りたいなんてこと言わないですよ。そもそも鬼殺も出来ない私が戻る必要性なんて無いですし。鬼殺隊に戻らずとも、杏寿郎様のお傍に居るだけで関わりは出来てしまいますので。それならせめてお手伝いを出来たらと思っただけです」
杏寿郎に手拭いを渡した月奈は苦笑している。「勿論、関わらないように。ということであればそのように」と付け加えた。