第24章 誤魔化し
カ「我儘と素直は違う。自身を滅して生きていてもただ辛いだけ、私がそうだったからよく分かるの。月奈、誰でもない自分の気持ちは自分だけしか分からないの」
「やめてカナヲちゃん…私の気持ちなんてどうだって良いのよ、皆が幸せになれば…」
善「誰がそれを望んだの?月奈ちゃんの犠牲の上に幸せを願った人が鬼殺隊に居るって?」
(鬼殺隊にそんな人はいない。誰もが他人の幸せを願うばかりだった。誰かを利用しようとなんて誰も考えていなかった)
炭「月奈、そうやって誤魔化していると煉獄さんへの気持ちも嘘になってしまう。まだ戻れる岐路で道を間違っちゃ駄目だよ?」
杏寿郎への気持ちすら嘘になる。その言葉に蓋をして仕舞っていた杏寿郎との思い出すら自身の手で消していこうとしていることに気付き月奈は堪え切れずに涙を零した。
どうしても忘れられない杏寿郎の姿にいつも救われていた、だけど辛かった。どれだけ怖い夢を見たって杏寿郎が居れば大丈夫だった。けれど、自分の為に杏寿郎の人生を壊す事が
とてつもなく恐ろしくなった時”一緒にいられない”と分かった。
「駄目なの、戻れない。これだけは絶対に駄目!」
ー月奈から怯えの匂い?一体どうして…
炭治郎は微かな匂いに眉を顰める。自分が死ぬことすら怯えることはなかった月奈、鬼殺隊を抜けてから一体何があったというのか。
カ「…炭治郎?」
珍しく険しい表情の炭治郎にカナヲは何かを感じ取ったのかと目を向ける。その目を見返すと、炭治郎は首を振る。これ以上は刺激できない、と。
善「…なんで怯えるんだよ?助けて欲しいなら言わないと駄目だよ月奈ちゃん!」
炭「善逸やめろ!これ以上はやめたほうがいい!」
善「煉獄さんだって苦しんでる音を出してる!炭治郎だって分かってるだろ!」
炭治郎に止められても善逸は止まらない。ずっと二人の音を聞いていて我慢が出来なくなったのだろうか、炭治郎はともすれば縋ってでも月奈を諭そうとしそうな善逸に必死に「やめろ!」と声を張る。
カ「思い出を覚えていることが辛いなら忘れるようにしたほうがいい。何も感じ無くなれば恐いものはなくなって淡々と生きていけるよ」
カナヲがそう言って胸から取り出した小瓶には透明な液体が入れられている。