第24章 誤魔化し
カ「でも、破談になったって…」
「しのぶさんから聞いたんですか?…破談については触れ回ることでもないですし、別に…」
畳から勢いよく顔を上げた善逸から何故か泣きそうな顔で見つめられて、月奈は驚く。
何故他人が泣きそうなのかと。
善「俺は女の子に振られるだけでも泣きじゃくるくらい辛いのに、月奈ちゃんは平気なの!?」
(平気?そんなはずはないわ。だけど、辛いからと泣き暮らしても無意味だもの。それに初めから破談にするつもりだったのは私…)
「破談の理由は至極当然だった、それを辛いなんて思わないですよ」
善「…どうして自分を誤魔化すんだよ、月奈ちゃんからはこんなに辛そうな悲鳴みたいな音がするのにさ!」
「…っ!?」
善逸の言葉に月奈の頬が羞恥で紅潮する。誤魔化していることに気付かれたことに動揺した月奈は「違う!」と叫んだ。
「善逸様の聞き間違いです!私は誤魔化してなんか…っ」
(平静を保たないと読まれる!落ち着かなきゃ…!)
指先が白くなるほどに拳を握り目を閉じる。深呼吸をして自身を落ち着かせようとするが、炭治郎が呟いた一言に目を見開いた。
炭「月奈、誤魔化しは聞かないって知ってるだろう?今の月奈からは後悔と諦めの匂いしか感じない。もう少し自分の気持ちを慮ってあげなよ、月奈自身が可哀想だ」
「私が可哀想…?何を言って…」
カ「…私には炭治郎や善逸のような感覚はないけれど、少なくとも月奈はもっと素直に生きていたはず。今は我慢ばかりで辛そうに見える」
(自分の選択はいつでも後悔が無いように選び取ってきた。そこに私の正直な気持ちなんて必要は無い、邪魔になるだけだった)
しかしよくよく考えてみれば、自身の気持ちから目を逸らし続け人の為にとエゴをただ重ねていただけなのではないかと思い至った月奈は茫然とした。
「違う、我慢なんてしていない。私は我儘なんだから…」
ぐらりと足元が揺らぐ感覚に月奈は青褪めた。自分がしてきた選択に意味があったのか分からなくなり、握り過ぎて感覚が消え始めた手に温かな手が重なった感覚に顔を上げた。