第24章 誤魔化し
「カナヲちゃん...もしかしてしのぶさんに頼まれたの?」
声を聞いて振り返った月奈は穏やかな微笑みを浮かべているが、警戒は解いていない。隠し持った簪には触れたままなのが証拠だ。
カ「違う。蝶屋敷から突然出ていったから心配だったの」
「どうして炭治郎様と善逸様もいるんですか?」
窓辺に立つ人影は三人。
部屋の明かりは暗目に落されてはいるものの、完全に落とされているわけではないので羽織りの柄で誰なのか判別がつく。
炭「ごめんね月奈、夜遅くに押し掛けちゃって。蝶屋敷で会った時に随分と疲れていたようだったし、突然出ていったって聞いたら心配になって。な、善逸!」
善「うん...顔色が余り良く無かったから心配してたんだ!月奈ちゃんが怒るかもとは思ったんだけど、心配でつい。本当にごめん!」
頭を下げて謝る二人に月奈は溜息を吐いた。来てしまった以上何を言っても仕方の無いこと、ならば早々に目的を達成してお引き取り願うのが一番良さそうだ。
(それに弟の事についても御礼を言えて居なかったし、ある意味良かったかもしれないわね)
「いえ、弟のことで御礼を伝えられて居なかったのでお会いできて良かったです。その節は本当にありがとうございました」
善「いや、俺は何も...最後は煉獄さんが」
炭「善逸!」
(誰が首を斬ったかは聞いていなかったけれど、やはり杏寿郎様だったのね)
カ「弟さんのことは大変だったね。私は何も役に立てなかったけれど、安心した」
「弟が奪った命は戻らないけれど、これで良かったんだって思うわ。...それで何が聞きたいのですか?」
聞き辛いことなのだろうか、三人が一瞬口を噤む。カナヲがチラリと視線を送った先は、何故か青褪めている善逸だった。
(?具合でも悪いのかしら)
「善逸様、顔色が…」
カ「月奈、弟の事が落ち着いたし…戻って来るつもりはないの?」
善逸に伸ばした手がピタリと止まり、月奈はカナヲに視線を向ける。
「戻るつもりはないわ。カナヲちゃんは知っているでしょう私が結婚していること」
炭「え?結婚!?」
善「それって人妻…っうぎゃ!」
炭治郎に押さえ込まれ畳に顔面を突っ込む形になった善逸に月奈は少し哀れさを感じながらも発言に呆れていたので放置を決め込む。