第4章 行く先
(あれよあれよという間に連れてこられた…)
月奈はしのぶと煉獄に挟まれ、街中を歩いていた。
し「煉獄さん、あちらの呉服屋で探しましょう。月奈、気になるものがあれば言ってくださいね」
うむ!と言ってズンズン進んでいく煉獄は私としのぶさんが行く道の人込みを開いてくれていた。背丈もあり服越しでもわかる鍛えられた体、そしてあの存在感とくれば、人はギョッとして避けていく。
「すごい…まさか、これを狙って煉獄様を連れてきたのですか?」
おぉ~とパチパチ拍手をしていた月奈はしのぶを横目で見る。
し「さぁ、どうでしょうか?行きましょう月奈。道が閉じてしまいますよ」
(確信犯、決定ですね)
恐ろしや、と心の中で呟きながら一行は呉服屋へ入っていく。
し「これくらいがいいのでしょうか?あぁ、でもこちらの柄も綺麗ですね、月奈はどちらが好みですか?」
「あの…明日お館様に会うための着物選び、でしたよね?」
し「もちろんです!さすがに入院着ではお連れできませんから」
既に2つほど店を回っているが、その全ての店で着物を買ってもらっている月奈は正直困っていた。
(高い!ただの居候が貰っていいものじゃない!)
働いて返すにも、時間がかかりそうなものばかり。
しのぶと煉獄は涼しい顔をして買ってしまう。
「とにかく!もう十分なものを買っていただきましたので大丈夫です!お二人には働いてお返ししますので、ご勘弁ください!」
と困り果てて言ったところで、ハッと店主の顔をみて青褪める。
明らかに「買わずに店は出ていかせん!」という表情だ。
(そりゃ上客ですもんね!そういう顔になりますよね!でも私のお金じゃないのに、あれ欲しいこれ欲しいなんて言えないよ!)
ふと視線を巡らせると、店の一画に簪が並んでいて目を惹いた。