第24章 誤魔化し
月奈が宿で床についた頃、蝶屋敷では少し騒ぎが起きていた。原因は慌てて戻ってきた杏寿郎である。
し「煉獄さん!もう夜更けなのですよ!他の患者の迷惑になりますからやめてください」
煉「では、ここに竈門少年と黄色い少年を呼んでくれ。探す手間が省けるな!」
強引過ぎる言い分に絶句するしかないしのぶは寝間着に羽織を羽織った状態で、もう寝る準備をしていたことが分かる。恐らく患者もすでに眠りについているものが殆どだろうと予想はついたが、いつでも良いなどと悠長な事を言っていられない杏寿郎はしのぶに詰め寄る。
煉「すまないが事は一刻を争う!きっと明日の早朝には月奈は再び姿を消すだろう、その前に捕まえる!」
し「つ、捕まえる?ですが月奈は本当の事を話してくれませんよ、どうやって捕まえるおつもりですか?」
詰め寄られたしのぶはそこまで言うと、杏寿郎が呼べと話す二人を思い浮かべて「まさか…」と呟く。
し「隠している事を暴くつもりですか!?二人の協力の元で」
それはあまりに酷ではないのかとしのぶは眉を顰める。誰もが自身の胸中を暴かれるなど良い気がしないのは当然だ、まして月奈があれほど頑なな理由は十中八九杏寿郎絡みだと分かっていて本人が暴くなどと残酷過ぎる。
煉「そうでもしないと月奈はまた雲隠れをしてしまう。よもや胡蝶も気付いていないわけではないだろう!柱合会議の時の月奈の言葉に違和感は無かったか?」
杏寿郎が言わんとする違和感、それはしのぶも気にかかってはいたこと。まさかそんなことはないだろうと思っていても、月奈の行動を制限するものはもう無いことを考えると可能性はゼロではない。
し「私の気にしすぎだと思いたかったのですが、そういうわけにもいかないようですね」
しのぶは傍らに立つカナヲに炭治郎達を呼んでくるように言うと、玄関に立ったままの杏寿郎に診察室へと入るように促す。玄関で話されるよりは部屋に入った方が杏寿郎の声も幾分か響かなくなるだろうと思いながら。
炭「失礼します!何かありましたか?」
診察室の扉が開き顔を出した炭治郎の後ろには善逸が怯えた表情でくっついている。夜更けに突然柱から呼び出しがかかったのだ、何か仕出かしたのだろうかと不安になるのも当然かもしれないとしのぶは苦笑する。