第24章 誤魔化し
煉「俺は近付けん!それに、もう月奈は結婚している。となれば朝霧少年も手出しは駄目だ!」
雅「月奈さんが結婚?やはり炎柱様とは…」
煉「…とにかく、月奈が無事に宿に入ったことは確認した。これでこの話は終いだ!帰って体を休めるといい!」
宿があるだろう方向に顔を向けていた杏寿郎は、雅雄に視線を向けたが返される視線の意味に気付きジリと胸が焦げ付くような痛みが生じる。
煉「納得が行かないとでも言いたそうな目だな。しかし納得せねばならん!月奈は鬼殺隊を抜け一般の人間となった以上、俺達と関わる必要は無い」
雅「…それはご自分に言い聞かせているのでしょうか?そもそも俺は月奈さんと炎柱様の関係についても納得していませんでしたが?」
ーなるほど。あまり良いようには思われていないとは分かっていたが、敵対心を持たれていたという方が正しかったか。
雅「俺は月奈さんの口から結婚について聞いていませんので、知らぬ事実です。炎柱様との関係も無くなったとなればそれは即ち俺が入る隙間もありそうですね」
意味深な笑みを浮かべた雅雄とは対照的に、杏寿郎の顔からは普段の笑みが消えた。放たれた威圧はさすが柱というべきか、雅雄の背に冷たい汗がツゥと伝った。
ー少し煽り過ぎたかもしれないな。さて、どうしようかな。
雅「俺は月奈さんが幸せであれば良いと思っていましたが、今のこの状況が本当に月奈さんの望んだ結果なのか甚だ疑問です。でも俺に嘘を暴く能力なんてありませんし、言われなければ分からないのですよ」
ー望んだ結果か疑問…何か隠していると感じたのは俺も同じ。しかし嘘を暴くなど…
杏寿郎は雅雄が言った”嘘を暴く能力”に引っ掛かりを覚える。以前蝶屋敷で自身の内心を暴かれた経験があったような…
この三人は嗅覚・聴覚・触覚が優れているのですよ。
しのぶが言っていた言葉をハッキリと思い出した瞬間、杏寿郎は蝶屋敷へと走り出した。確か、今日は二人が蝶屋敷に居たはずだ。
雅「…行ってしまった。どうしてあれほど頑ななのか…二人とも似た者同士ということですか」
フゥと息を吐くと途端に汗が額から噴き出る。柱の威圧を真正面から受けて平静を装っていた雅雄は「あの威圧を受けるのは二度と御免ですね」と呟いて帰路についた。