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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第24章 誤魔化し



「私が他に嫁いだ事を知った今、以前程の執着は無くなるでしょう。良い縁があって欲しいと願っているのは今も昔も変わりません」

蜜「師範のこと、もう好きではないの?」

(執着しているのは私の方だわ。あの人を好きじゃなくなることがこの先あるのかどうか...)

し「私達にも本当の気持ちは言えないかしら?」

「...もういいじゃないですか。好きかどうかではなく、煉獄様が幸せならば私はそれでいいのですから」

例えそこに私が居なくても、元より覚悟して鬼殺隊を抜けているのだから後悔はしない。否、後悔出来ない。

(どうして皆、私の本心を引き出そうとするの。私が半年かけて蓋をした本心を引きずり出そうとしないで!)

「私、やっぱり宿に行きます。ここからならばそれほど距離もありませんから。今日はありがとうございました」

座って居た椅子から立ち上がると、二人が止める間もなく扉を開いて廊下に出る。一目散に玄関に向かう途中、何かにぶつかった月奈は息を荒げて倒れ込んだ。

「ごめ...なさい」

雅「...月奈さん?どうしてここに?」

「雅雄様...」

倒れ込んだ相手は雅雄だった、隊服を身に付けていることから入院しているわけではないことが読み取れる。

(元気でいらっしゃったのね、良かった)

し「月奈ー!?」

蜜「月奈ちゃーん!!」

廊下の先から聞こえる声に、早く逃げなければと立ち上がった月奈は気付けば雅雄に手を引かれ蝶屋敷を飛び出していた。

「ま、雅雄様!?あの、手を離してください!」

走りながら手を振りほどこうとするが流石は男、びくともせず月奈は引っ張られるまま街へと繋がる林へと入っていった。しばらくして後ろから誰も追ってこないことを確認した雅雄は月奈の手を離すと「ごめんね」と苦笑した。

雅「逃げたかったみたいだし、手を引いた方が早いかなって思って。抱えて走っても柱二人相手に逃げ切れるか分かりませんでしたが...撒けたようです」

耳を澄ませば虫の声が聞こえるばかりで、あの二人が追ってきている気配は確かにない。ホッと肩の力を抜くと、雅雄が頭を撫でた。

雅「色々あったようだけれど、元気そうで良かった」

そう言って微笑む雅雄は、初めて会ったあの頃よりも幾分男らしい表情になっていた。
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