第24章 誤魔化し
「生きているだけでも幸せだって思っていたのに、今ではそれ以上のことを願ってしまうのですから欲張り以外の何ものでもありません」
し「月奈、一つ聞いてもいいですか?煉獄さん以外の殿方との縁談を受けて本当に幸せですか?」
「...お二人に以前話した計画、覚えていますか?」
計画?と二人が思案顔になったのは一瞬で、どの話のことかすぐに思い至ったのだろう「あの計画ですね」としのぶが呟いた。その横で視線を落とした蜜璃。
「思い出して頂けたようですね。あの計画通り、寧ろ迅速に事が運びました。傷だらけの私を抱くことが出来ず、子を成せないならば用無しということで家を追われました」
当初は精神的にかなり辛かったことを思い出す。分かってはいたことだが、自分の身体がそれ程に醜いのだと言われ傷つかないはずはないのだ。家柄も良く長男だった彼からすれば子を成さねば自身も家を追われかねないこと、下の弟達に負けてはいられないことが重圧となり両親の言いなりになるしかなかったのだろう。
その後すぐに他の女性と縁談をして婚姻に至ったと風の噂で聞いた。子供については聞こえてこなくとも、夫婦関係が続いていればいずれは恵まれるだろう。
「家を追われてからは、体術の師の元で道場を手伝って面倒を見て頂いていました。杏...煉獄様は御存知の人物なのでよく訪問して下さっていたようです、師範と世間話をして帰るのが日課のようになっていました」
蜜「それって...しのぶちゃん、あの噂の邸宅のことかしら」
し「そのようですね」
噂?と二人に聞き返すと、月奈が姿を消してからしばらくしてとある邸宅に頻繁に訪れるようになったこと、それはつまり良い相手が見つかったのではないのか、と隊内で囁かれていたようだ。
「それは..師範の家だけではなく他に通っていた可能性もあるのでは?」
蜜「それは無いわ。月奈が姿を消してから師範がどれだけ意気消沈していたか知っている人から見れば、良い縁が出来たなんて思えないことだもの」
し「月奈が一番分かっているのでは?煉獄さんがそうやって切り替えられる人なのかどうか」
そんなこと有り得ない、と言いたげな視線を二人から向けられ月奈はつい視線を逸らしてしまった。自分で蓋をした我儘な気持ちが口から出てしまいそうだ。