第24章 誤魔化し
炭「あれ?月奈!?どうしてここに…」
善「え?月奈ちゃん!?」
蝶屋敷に到着すると、元気な声に出迎えられ月奈は顔を上げた。蜜璃に背負われた月奈は、お館様の屋敷から出発してすぐに寝不足と精神的疲労により気を失うように眠りに落ちてしまったのだ。
「お久しぶりです。炭治郎様、善逸様。その節は弟がお世話になりました」
し「月奈、部屋に行く前に少し診察させて貰いますね。甘露寺さんも一緒に診察室へ」
ケガでもしたのかと心配そうに見つめる炭治郎と善逸に、「大丈夫ですよ」と月奈は微笑みまた後程話をしたいと伝えると、二人はしっかりと頷いて微笑み返してくれる。
背負われたまま診察室へと連れて行かれた月奈は少しホッとした。事情をある程度知っている二人しか居ないから、というのは勿論だが何よりも怖かったのは杏寿郎の視線だったから。
(恨みを持たれているのは想定の上だった。それを覚悟していたのに、傍に居た頃と変わらない瞳に見られてどうしていいか分からなくなってしまったわ)
蜜「月奈ちゃん、ごめんね。頬大丈夫?」
「え?...あぁ、大丈夫です。自分の行いが返ってきたようなものですから蜜璃さんは気にしないでください」
自分勝手を働いたしっぺ返しだ。寧ろもっと手酷いしっぺ返しを喰らっても仕方ないことをしたという自覚はある。
しのぶは少しだけ赤みがかった月奈の頬を撫でると、蜜璃に向き直り溜息混じりで苦言を呈した。
し「甘露寺さんは常人の捌倍の筋肉があるからこそ、冷静になって頂きたいものです。今回もきちんと手加減があったようでこれくらいで済みましたが、怒りを抑えず張り手をしたら月奈はどうなっていたことか」
蜜「ご、ごめんね。でも余りにも月奈ちゃんが...」
(そういえばそんな事を以前聞いたような...生きてて良かったわ)
「...ふふ」
し「月奈?」
「ごめんなさい、鬼殺隊にいた頃を思い出してしまって...あの頃より随分と欲張りになってしまったなぁと」
蜜「欲張り?」
一瞬、張り手をした事で頭に異常をきたしたのかと蜜璃は心配になったが、落ち着いた様子で微笑みながら「そう、欲張りです」と頷いた月奈は特に問題は無さそうでホッとする。