第23章 隠し事
(え?蜜璃さん…怒っているの?どうして?)
普段ならばニコニコと笑顔を絶やさず姉のように関わってくれていた蜜璃。今は険しい表情で月奈を見下ろしていることに月奈はただただ見つめ返すことしか出来ない。
杏寿郎の拘束をあっさりと解いて月奈の元へと歩み寄り、ガシッと両肩を掴んで揺さぶってきた。月奈はなすがままグラグラと揺さぶられる。
蜜「縁あって婚姻関係を結んだのなら不義理を働いたらいけないわ!でも、鬼殺隊を抜ける前に言っていたことが本当ならハッキリしないと旦那様にも失礼じゃないかしら?」
し「甘露寺さん!…その話は今はちょっと」
まくし立てるように月奈に言葉をぶつけたところで、しのぶの言葉にハッと杏寿郎と行冥を見た蜜璃はダラダラと冷や汗を流す。てっきり月奈から婚姻の話を聞いているものだと思っていた蜜璃は「まさか言ってなかったの!?」と叫び更に空気を凍り付かせることになった。
し「…月奈、こんな形で話が漏れたことはごめんなさい。でも、ハッキリさせる良い機会かもしれません」
蜜「ご、ごめんなさい。てっきり知っている話だと…」
申し訳なさそうな表情の蜜璃に、悪気は無かったのだと分かる。そもそも口止めが甘かった自分が悪いのだと溜息を吐くしかできない。
「もういいですよ。縁談を受けたことは間違いありませんし、ハッキリと話していなかった私の落ち度ですね」
居住まいを正すと月奈は静かに口を開く。全てを正直に話すつもりはないが、しのぶと蜜璃が知っている程度の話ならば辻褄が合わなくなることは無さそうだと判断した。
話は出来るが、杏寿郎がどのような表情をしているのか怖くて視線を向けられない。どちらにせよこの場から逃げる手段はゼロだと腹を括る。
「鬼殺隊を抜ける為に縁談を受けました。街に住む方で鬼殺隊に助けて貰ったことがあるごく一般の方です。とても優しい方でした、鬼殺隊を抜けていたので仕事についても何も気にせずただ日常を過ごせて…」
し「月奈はそれで幸せなのですか?それならば私達は何も言いませんが」
行「今日のことは何と話して暇を貰ったんだ。鬼殺隊に理解があるのか?」
それは…と視線が泳いだことで何かを隠していることは明白だった。