第23章 隠し事
あまねからの許可を受け、しのぶは話し合いの輪の中にいる蜜璃の肩を叩くと縁側まで連れ出す。月奈と直接話が出来るとなれば、落ち着いて話が出来る人間が良い。尚且つ厳しい目を向けない人間も必要だ。そう判断したしのぶはもう一人声をかける。
し「悲鳴嶼さん、少しよろしいですか?」
行「胡蝶、あまね様から何か話があったのか?」
蜜「月奈ちゃんのことかしら?それだったら師範を…」
杏寿郎を呼びに行こうとした蜜璃の腕を掴み首を横に振る。行冥は何故杏寿郎を呼ばなかったのか察したようで黙っている。
し「今の状況で煉獄さんと引き合わせることは得策では無いと判断しました。月奈の顔色が良くないので診に行くようにあまね様より言われています、お二人には付いてきて頂きたいのです」
蜜「え?どうして…私と悲鳴嶼さん?」
行「…なるほど。月奈に心労を掛けない為か」
行冥の言葉にしのぶは頷く。しかし蜜璃は納得が行かないのか困った表情のまましのぶを見つめている。
突然姿を消してから半年、杏寿郎がどれだけ探していたのかは皆が分かっていること。しかし会わせたところで冷静に話し合いが出来るかどうかは分からないのだ。
し「昨日、街で月奈と偶然会いました。恐らくこの会議に呼ばれたからでしょう。私も煉獄さんも初めは分かりませんでしたが、月奈はこちらに気付いて慌てて逃げて行きました」
蜜「逃げた?え?どうして!」
行「…それほどまでに会いたくなかったのか?」
いいえ、としのぶは答えると道で拾ったものを羽織の袂から取り出し二人に見せる。何故今これを出してきたのかと首を傾げた二人を横目に、輪の中で真剣に話に加わっている杏寿郎をチラリと視線を向けた。
ーあの時、私が何を拾ったかしっかりと見ていたはずの煉獄さんが月奈をあの場で引き留めなかったことは不思議でならなかった。
し「双方に何か思うことがあるようです。これはあの二人にとって大切な物のはず、昨日落とすまでずっと持っていた月奈とそれを知った煉獄さんがこれだけ大人しいことが不思議でなりません」
行「双方の気持ちを聞こうということだな、確かにお互いが居ては正直に話せないこともあるだろう。まして月奈は調子が良くないとなれば、落ち着いて話を聞いてやらねばならん」