第23章 隠し事
どうやら景色を楽しんで歩いていたら道を外れていたらしく、先ほどまで頭上高くを飛んでいた鴉が勢いよく降下して月奈の頭を突き刺したのだ。
「もう、本当に痛いんですってば!!もう少し優しくして
!」
「ウルサイ!ハヤクアルケ!」
「…なんなのホント」
肩に乗った鴉がビシリ!と片翼で眼前の道を指し示し耳元で急き立てる。もっと静かな鴉を付けてほしかった、とお館様を恨めしく思いつつも一人の旅路とは思えない程に賑やかで寂しいことは無い。ブツブツと文句を言いながらも月奈の口元は少し緩んでいた。
あ「月奈さん、お疲れさまでした。久方ぶりですね」
森を抜けると大きな屋敷の門が現れ、出迎えるようにあまねが立っている。月奈がお辞儀をすると「こちらへ」と邸に入るように促された。
久方ぶりのお館様のお屋敷に入ると、依然変わらない綺麗に白い玉砂利が敷き詰められた庭は木々も整えられており空気すら綺麗だ。
(良かった、雲が流れて空も綺麗に晴れたのね)
空を見上げれば、朝見た曇り空は綺麗に晴れ渡っている。青い空にゆっくりと流れる白い雲を見ていた月奈は名前を呼ばれ慌てて視線を戻すとあまねが庭を抜けた先で手招いていた。
案内された部屋に入って月奈は息を呑んだ。
館「月奈、久しいね。見苦しい姿を見せて申し訳ない…あまね」
呼びかけられたあまねは部屋の真ん中に敷かれた布団に横たわるお館様の元へ寄ると背中を支えて体を起こした。布団で隠れていた体には痛々しいほどに包帯が巻かれている。
「お館…様…そんな…」
(これ程までに病気が進行していたなんて!)
館「定期連絡は手紙でしかやり取りをしていなかったから気付かなくても無理はないよ、もう然程長くはないと分かっているから月奈に今日この場を設けられて良かった」
自身が死に近付いていると分かっていながらでも他人を気にかけるなど、常人では恐怖に飲まれ出来る芸当ではない。その上、良かったと優しい笑みを浮かべている。月奈は何も言えずただただ震える手を畳について頭を下げることしか出来なかった。
館「報告はこれから開かれる柱合会議の時に直接対峙した者から聞いたほうがいい。鬼殺隊を抜ける時に約束した二つを守ってくれたね、こうやってまた会えて本当によかった」