第4章 行く先
し「さて、本題に入りましょうか」
月奈の右手の絆創膏を貼りなおして、椅子に座りなおしたしのぶは机の上に置いてある手紙を手に取る。
煉「うむ、そうだな!」
私が座る傍らに煉獄さんが立って頷く。
チラリと煉獄さんを見ると、いつものようにどこを見ているか分からない目をしていた。多分しのぶさんを見ている…はず。
「あの、私に関連する話なんですよね?何か…しました?」
お館様からの手紙と私の共通点は無いだろう。隊士でもなければ、ただただ蝶屋敷に居候しているだけの身。
「もしかして!長く居候しているからですか!!?」
突然立ち上がり青褪めた表情の月奈に二人は目を見開いて驚いている。
「それは、その…行く宛がなくてですね。正直私も悩んでいまして…家族も亡ければ家もありませんし…」
(自分で言ってて情けなくなってきた…本当にただの居候だ)
し「違いますよ月奈。座ってください、その〔行く宛〕に関してお館様がお話をしたいと仰っておられます」
煉「その際に、胡蝶と俺が水橋少女を連れてきて欲しいと言われている!」
煉獄に肩をそっと抑えられ椅子に再び座った月奈は、気遣いを受け嬉しい反面自分が周りに守られているだけの人間ということを痛感し眉根を寄せる。
し「それで、いつお館様にお会いできるか、なのですが…月奈さん?」
「あ!はい。私はいつでも…煉獄様としのぶさんにお任せします。ご迷惑おかけします…」
煉「気にするな!全く迷惑などと思っていない!だから今日にでも、と思ったのだが俺は生憎夕刻からの任務が決まっている」
しょも…と眉を下げて困り顔をする煉獄。
そんなにすぐにはお館様も無理でしょう、と呆れていたしのぶは、おもむろに筆を手に取り
し「では、明日でよろしいですか?」
と返事を待たずして、筆を走らせた。