第22章 消失
でも月奈じゃねぇ。と伊之助は言い切った。杏寿郎はふとしのぶから聞いていた三人の特徴を思い出す。
ー確か、猪頭少年は肌で感じる感覚に敏感・黄色い少年は耳が良い・竈門少年は鼻が利く…だったか。それがどこまで信用できる感覚かはいまいち俺には分からんが…
蜜「月奈ちゃんに似た気配?それって…」
煉「猪頭少年!その感覚、間違いは無いか!?」
突然杏寿郎に肩を掴まれた伊之助は「お、おう…俺様の感覚に間違いは無ぇ!」と威張りつつも少し身を引いている。間近での杏寿郎の声量と目力にはさすがの伊之助でも慣れないようだ。
煉「その鬼まで案内を頼めるか猪頭少年!」
蜜「炭治郎君と善逸君も行こう!」
柱二人の表情が厳しくなったことで、炭治郎達三人はゴクリと唾を飲み込んだ。方向を聞いた柱二人は驚く速さでその場から走り出した、二人が残した風が頬を撫で、茫然としていた三人はハッと意識を取り戻し慌てて後を追った。
館「…そうか、ようやく月奈の弟に会えたんだね杏寿郎は」
あ「月奈さんをお呼びしますか?」
お館様は進行した病のせいで寝床から体を起こすのもやっとの状態になっていた。背をあまねに支えられながら膝に乗っている杏寿郎の鴉を優しく撫でてやる。
館「いや、鬼殺の報告が来てからでも遅くはないだろう。呼び出しに応じる約束はしてくれているからね。今は鴉で伝えるだけにしておこう」
その言葉に、もう一羽の鴉があまねの差し出した左手に静かに乗った。首に上品な布を巻いたお館様についている鎹鴉だ。
館「月奈に伝えてくれるかい?」
痛々しく包帯が巻かれた顔には変わらず優しい笑みが浮かんでいた。その表情を瞳に映した鴉は勿論とでも言いたげに静かに瞬いた。
「長谷師範、鬼殺隊より連絡がありました。近いうちに数日ここを離れます」
長「おや、思いのほか早かったね。道場の方は私がやっておくからゆっくりしておいで、積もる話もあるだろう?」
月奈は長谷が開いていた道場で子供たちに体術を教えることで、長谷の家の世話になっていた。長谷の家から道場までは離れており、先日杏寿郎が訪問した時も道場に居たから出会うことは無かった。
(それよりも、ここ最近は何だかんだと杏寿郎様が訪問してくるからヒヤヒヤしたわ)