第22章 消失
事前連絡をするように、と長谷が言っていた通りに毎回事前連絡をしてから訪問をしていた杏寿郎の素直さのお陰で”偶然再会”なんていうことを回避出来ていたのは、杏寿郎にとっては皮肉でしかないだろうと月奈は苦笑した。
「積もる話ですか…まずは突然姿を消したことへの批難を浴びそうな気がします」
うーん、と難しい表情で唸った月奈、しかし心中は皆に会えることが少し嬉しかったりする。長谷はそれを見抜いて笑みを向ける。
長「それも月奈君を心配していた証拠だよ。有難く受けてきなさい。そしてお館様にしっかりと御礼を述べておいで」
鬼殺隊の柱二人が月奈の弟と思われる鬼に会敵。近いうちに出向いてもらうことになるだろう、準備をしておいて欲しい。そう鎹鴉から伝えられたが、九人の柱の内で会敵したのは誰なのか聞くことは出来なかった。
(これでようやく、月哉を苦界から解放させてあげられるのね。自分の手で送ってやることが出来ないのが申し訳ないけれど…)
自分の手の平を見つめる。手甲鈎は隊服と共にお館様へと返した、武器を握る機会が無くなった月奈の手は女性らしい手になっている。
(本来なら、武器を握ることなんて有り得なかったのに今では鬼殺隊での生活がこんなにも懐かしく感じるのは不思議ね)
あくまで道場で教えているのは護身術程度の体術であり、あくまで子供相手だ。武器を扱うことも激しく組手をすることも無い。初めのうちはそれが物足り無いと感じていたが今ではあの頃に戻れる気がしない。
長「もう夜も遅い、早目に眠りなさい。今日会敵したのなら呼び出しは遅くても明後日にはかかるだろうからね」
月奈は静かに頷くと、自室へと戻り眠りに着いた。きっと今日は夢を見ずに眠れるだろう、弟は鬼と言う魔からようやく解放されるのだから。