第22章 消失
蜜「師範!今日は一緒の任務ですね、よろしくお願いします!」
煉「甘露寺か!うむ、頼むぞ!」
杏寿郎が長谷の元を訪れてから数日が経ち、杏寿郎の精神は安定し始めていた。任務開始前の隊士達の少しの憩い時間、脇に走る用水は夕焼けをキラキラと映しもうじき来る夜を知らせている。
走り寄った蜜璃は杏寿郎の傍らに立っていた少年に気付き「久しぶりね!」と声をかけた。
炭「甘露寺さんお久しぶりです!刀鍛冶の里でお会いして以来ですね!」
煉「む?顔見知りか!刀鍛冶と言えば時透も行っていたな!」
炭「時透君ですか、確かにお会いしました!彼の剣技は素晴らしいですね!」
最初はちょっと配慮が無いとは思いましたが、と忌憚のない意見を付け足す所は炭治郎の良いところと言えば良いところなのだが…
煉「記憶のことがあったからな、許してやってくれ。そういえば今日は黄色い少年や猪頭少年は一緒の任務ではないのか?」
炭「いえ!一緒な筈なんですけど…」
キョロキョロと周囲を見回す炭治郎に聞けば、昨日までは各々が単体任務で出ていたようで今日久しぶりの合同任務らしい。森の入口に到着すると今日の任務内容を確認が始まり、各自が決められた位置を巡回する。普段通りの任務だ。
蜜「あのぅ、師範。この前しのぶちゃんとお茶していた時に話題に上ったんですが…」
煉「なんだ!それは面白い話題か?」
面白い、というか...といつもの蜜璃らしくない歯切れの悪さに杏寿郎は首を傾げる。発言で少し躊躇うことは合っても思ったことを口にする蜜璃、余程言いづらい話題なのだろうか?と杏寿郎は次の言葉を静かに待つ。
蜜「その...師範が最近とある邸宅に出入りしているって隠の中で噂になっていまして」
チラリの向けられる視線に蜜璃が何を言いたいか何となく分かった杏寿郎は「そのことか!」と大きく頷いて簡潔に答えた。
煉「面白い話でもないな!知人の家に訪問しているだけだ!」
継子として過ごした時間の中で杏寿郎の瞳から感情を読み取ることを身に着けていた蜜璃はホッと胸を撫で下ろした。
ー良かった、本当に知人みたい。女性の家に通っているというのは間違いだったのね。
しかしまだ確信には至らない。何故ならば、その噂が囁かれ始めた頃から杏寿郎が急激に元気になったからだ。