第22章 消失
炭「しのぶさん!お久しぶりです!あ、宇髄さんも!」
隠の後藤に背負われた炭治郎はブンブンと手を振り怪我人らしからぬ振る舞いをしている。後藤には「背中で暴れンな!」と怒られているが本人は余程二人に会えたことが嬉しいのか手を振るのをやめない。
し「炭治郎君、ケガをしているなら大きな動作はあまりよくありませんよ」
ニコリと微笑むとしのぶは縁側から立ち上がり炭治郎のケガを調べるべく近付いて行く。天元の前を通った時、ボソリと囁かれた言葉にハッと気付いた。
宇「炭治郎は鼻が利いたはずだよな?月奈に似通った鬼ともなればなにかしら共通点ありそうだし見わけもつきそうだよなあいつなら」
聞くだけならタダだよな、と呟いた天元はしのぶと共に炭治郎の元へと歩み寄り口を開いた。
宇「炭治郎、お前任務中に月奈の気配や匂いを感じたことはあるか?」
炭「え?月奈ですか?」
何故そんなことを聞くのだろうと不思議そうな表情の炭治郎だったが、天元の真剣な表情から茶化すような話ではないと感じ取る。そもそも鬼殺隊を抜けたはずの月奈の気配を感じるなんておかしな話なのだが。
炭「いえ、感じたことはありません!何かあったのでしょうか?」
し「今のところは何も無いのです、本当に何も。炭治郎君、もし任務中に月奈の気配がした時にはすぐに私達、柱に鴉を飛ばしてください」
宇「善逸と伊之助にも伝えておけ、ただし他の隊士には話すな。あくまで月奈から文を受け取った人間だけで話を留めておけ」
そうと決まれば、と手を叩いたしのぶは炭治郎を背負う後藤にニコリと笑顔を向けた。後藤も文を受け取った人間だ、それに月奈を探すように柱から依頼を受けたこともある。
ーまぁ、見つから無かったけどな。
後「分かってますよ胡蝶様、隠の中でも気付いたことがあれば報告するようにします。ところで炭治郎の治療を...」
宇「引き留めて悪かったな!炭治郎も早く回復して任務に戻れよ」
し「では診察室に行きましょうか」
やれやれ、と後藤が顔布の下で溜息を吐くと炭治郎を背負い直した。鍛えられた体躯の人間は重い、それに耳元で声を張られて喧しいことこの上ない。
ーあぁ、さっさと帰りてぇ。
そんなことを心でボヤきながら、しのぶの背中を追って蝶屋敷へと入っていった。