第4章 行く先
「あの…しのぶ様…何か…?」
し「私のことは様付けしなくて良いと言ったでしょう」
美人に間近で見つめられ、ドギマギしない人はいないだろう。しかも今は不満そうに口を尖らせている。より一層目を惹く。
(しのぶ様の顔、本当に綺麗だなぁ…)
知らず知らずに月奈の頬はピンクに色付いていた。
「はい…しのぶさん。あの、私のことも年下なので…」
し「あぁ、そうでした。…では月奈?」
しのぶはニコリと微笑んで月奈を見つめる。
「…?」
つられてニコッと笑い返すと、しのぶの指がツイッとカーテンを指した。
し「煉獄さんは今そちらでお休み中なんですよ。任務の帰りにお館様から手紙を頂いたようで、家には戻らずそのままここに寄られました。月奈…起こして貰っていいですか?」
あぁ、ケガなどはありませんから心配は無用です。しっかり起こしてください。
そう言って、立ち上がらせるとしのぶはカナヲに何か指示をしている。
カ「月奈…頑張って」
「え…?がんばれ…??」
静かに頷いてカナヲは診察室を出て行った。
しのぶを見ると、さぁさぁとカーテンを指差して微笑んでいる。
(なんで私が…がんばれって、煉獄さん寝起き悪いのかな…)
溜息をついてカーテンを開いてベッドに近付く。
規則正しい呼吸で眠る煉獄の顔は、普段の双眸が見えない為か随分幼い印象だ。