第20章 遭遇
二人が何かの拍子に目覚める場合もあったかもしれない...
(う...想像したらお似合い過ぎて辛いわ。継子であることも剣士であることも、しなやかな体躯と可愛い容姿。何を取っても私には無いものばかり)
蜜「月奈ちゃん!久しぶりね!」
スパン!と小気味の良い音を立てて開いたふすまに視線を向けると、そこには今しがた想像していた蜜璃が立っていた。こんにちは、と軽く頭を下げると猪のように突撃される。
「うぐっ!?」
し「甘露寺さん、飛び付くのは駄目ですよ...月奈、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。蜜璃さんお久しぶりです」
慌てて離れた蜜璃は苦笑している月奈に「ごめんなさい」と謝り少し落ち込んでしまった。いつもであればもっとニコニコしているのに...
「蜜璃さん?どうしたんですか?」
し「甘露寺さん、この後は時間があるって話していましたよね。月奈の御遣いに一緒に行ってはどうですか?」
しのぶからの提案に月奈はもちろんのこと、蜜璃も首を傾げる。それを見れば、蜜璃も提案の意図を知らないことは分かった。
蜜「月奈ちゃんの御遣い?私も一緒に行く必要があるの??」
し「御遣い先を聞いたら行きたくなるのでは?」
どこ?と言いた気な蜜璃の視線が月奈へと向けられ、蛇柱である伊黒の所に行くことを伝えた。瞬間に蜜璃は立ち上がり驚く程の力で月奈を引っ張って立ち上がらせる。
「え!?なに!?蜜璃さん?」
蜜「伊黒さんの所なのね!じゃあ早く行きましょう!」
グイグイと引っ張られしのぶへの挨拶もままならないまま月奈は客間から連れ出されて行った。
し「まったく甘露寺さんは忙しない困った人ですね、でもほぼ初対面の場で甘露寺さんが居れば伊黒さんもきっと大丈夫でしょう」
頬に手を当てて溜息をついたしのぶだったが、この状況は予想通り。元々、伊黒と月奈は遊廓の任務終了時に会っている。しかし、隠の隊服だ。月奈だと認識出来るほどの情報は無かったはず。
し「あまり月奈を虐めて貰っては困りますからね」
防波堤を置いておかないと。
呟かれた一言は、普通に聞いていれば蜜璃にとても失礼だと思われるだろう。しかし、伊黒の事に関しては甘露寺=防波堤と柱内での共通認識だ。