• テキストサイズ

【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第19章 前進と後退



杏寿郎の手によって月奈の口が塞がれたが、廊下に響いてしまったのだろう数人の足音が部屋に近づいてくる。
見世の若い衆は売り物である遊女に傷を付けられないよう気を配っている、特に清花は将来は売れっ妓になると期待されている新造。

襖の向こう、廊下から若い衆が声をかけ襖が開かれる。
若い衆が下げた頭を上げると、杏寿郎にしなだれかかる清花の背中が目に入る。

清「あら、どうしたの?私に何か用かしら?」

肩越しに若い衆を振り返る清花の腰には杏寿郎の手が添えられ、邪魔をするなと言うような雰囲気を醸し出している。その光景にすぐさま若い衆は「いえ、申し訳ありません」と静かに頭を下げて襖を閉じた。

遠ざかって行く足音を聞き届けた二人は、向かい合う自分たちの間で口を塞がれている月奈を見て溜息を吐く。

清「この部屋で私と旦那様以外の人間が居たらどうなるかくらい知っているでしょ藤葉ちゃん?」

「おへんにゃはい…」

若い衆に見つかって一番まずい立場なのは月奈なのだ。いくら女といえど見つかれば捕まえられていただろう。詳細は知らないが、遊郭にはとても酷い折檻というものがあるらしい、潜入していた時に姉女郎達の中でも噂として流れていた。
足抜けや間夫を作ることは勿論、ちょっとした悪戯であっても罰を与えられることもあると。

(二人のおかげで助かったわ。だけど…)

若い衆は去ったというのに清花はしなだれかかったまま、杏寿郎の手は清花の腰に回ったままということが気になって仕方がない月奈はソワソワと体を揺らす。

煉「あぁ、すまん。息苦しかったか?」

杏寿郎の手が口から離れ、現れた月奈の表情に清花が一瞬驚いたような表情をした。唇を尖らせて拗ねたような顔の月奈、何故そんな顔をしているのか考えた清花はすぐに答えに辿り着く。伊達に遊郭で振袖新造をやっていない、女社会の遊郭ではよく見る表情だ。

ーまさか、若い衆を追い払う演技が藤葉ちゃんの悋気心を煽るなんて思いもよらなかった。

月奈自身は内にある気持ちが悋気心だとは微塵も分かっていないのだろう。表情に現れているのは隠すつもりがないということ、通常であれば嫉妬心という醜い気持ちを表面に出してしまうと嫌われるのではないかと考えるため表情や仕草に出さないように隠すことが多い。
/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp