第18章 任務
月奈の頭をポンポンと撫でた実弥は、じゃぁなァと自宅へと帰って行った。
煉「さて、とにかく任務お疲れ様だったな!随分災難な状態にはなったようだが…」
「鬼を一体倒したから皆の気が緩んでしまって…って、言い訳ですね。申し訳ありません」
家に入り、頭から被っていた布を脱いだ月奈の姿を見て杏寿郎は苦笑する。
服はぶかぶかになり、手足は袖や裾に隠れてしまっている月奈の姿はまさに子供だ。それでも話す事は普段の月奈なので不思議な光景でしかない。
煉「それにしても面妖な血鬼術だな!まぁ、攻撃に特化した血鬼術ではなく防御に特化している血鬼術になるのだろうか。それに目くらましの鬼も居たとなると…面食らっている間に逃走も可能だな!」
「面妖過ぎますよ。それに、動きづらいのは事実ですからこの状態で鬼に襲われればすぐにやられてしまいますね。杏寿郎様が言った通り、刀はおろか自身の武器一つも操ることができませんでした」
(勿論、時間が経てば縮んだ体に慣れることはできるだろうけれど、慣れる前に鬼に襲われて終わりだということは目に見えるわ)
袖をぶらぶらと振りながら裾を引きずって廊下を歩いていると、千寿郎が台所から姿を現す。
千「兄上、月奈さんが戻られたのです…か…」
語尾がどんどん消えて行き、みるみる千寿郎の顔色が青褪めて行く。その視線は体が縮んだ月奈を捉えている。
「千寿郎さん、ただいま戻りました」
ニコリと微笑む月奈は、確かに月奈だ。けれど、千寿郎と然程変わらなかった背丈が突然縮んでいることに頭が追い付いていない様子であたふたしている。
千「月奈さん…?え?どうして縮んで…???」
「恥ずかしながら血鬼術にかかってしまいました。数日で治るとしのぶさんから言われているので心配しないでください!」
とりあえず隊服を引きずって歩くのも忍びないので着替えてきます。と部屋に向かった月奈を見ながら千寿郎は疑問を口にする。
千「兄上、月奈さんの元の背丈から考えても着替えがないのではないでしょうか?」
煉「いや、それは大丈夫だと先程言っていたから大丈夫なのだろう!」