第17章 生家
「私の許可…だからずっと残されたままなのですね」
煉「月奈が残したいとなれば維持するための費用等は煉獄家で持つことも可能だ。月奈一人で維持は難しいだろう」
そこまでして残すくらいなら、住む人も居ないただ廃れさせていくだけの上屋は壊そう。空いた土地が活用出来るならば鬼殺隊に利用してもらう。活用ができるのであればですが、と月奈はこの家の処分についての考えを杏寿郎に話した。
「元々壊されていると思っていましたし。思い出の品が手元にあればそれだけで充分、惨劇の起きた家は残さない方がいいです」
廊下を歩いてたどり着いた部屋に入って行った月奈は、衣装箪笥を開いて何かを探し始めた。どうやら女性の部屋らしいと気付いた杏寿郎は部屋に入らず、廊下から様子を伺っている。
煉「それで月奈が良いならばそうするといい、お館様にもそのように報告をしておこう!…お館様が月奈を気にされていたぞ」
「お館様が私を?」
目当ての物を見つけたのか、廊下に出てきた月奈に杏寿郎は頷く。柱合会議が終わってからお館様に呼び止められたと。
煉「稀血であることは勿論だが、任務で大怪我ばかり負うことについて。隠になったはずなのにと気にされていた!」
「…それは、怒っていらっしゃるのでしょうか困っているのでしょうか」
煉「直接会って確かめると良い!近いうちにお館様から連絡があるだろう」
次にお会いする機会にきちんと謝罪しようと心に誓って、苦笑した月奈の足元にはたとう紙に包まれた物。薄さから予想するに着物だろう。
煉「他の部屋にも行くのだろう?帰りにまとめて持って帰ろう」
「両親、月哉それぞれの形見を持って行こうと思います。短時間であれば着物も折りたたんで持ち帰れますし、この一着は…とても大切な物なので見つかって良かったです」
愛おしそうに着物を見つめる瞳には、寂しさも浮かんでいる。その瞳を見て杏寿郎は自身の母が亡くなった時を思い出す。
ーあの時は父上が打ちひしがれていたから、寂しいというよりも自分がしっかりせねばと思うばかりだったな。
「杏寿郎様、お疲れですか?部屋でお待ち頂ければ、私一人で整理をして参りますが」