第16章 回復
月奈はあくまで、隠として鬼殺隊に入ること。
この条件は最終選別に行く為の条件として言われたものだ。しのぶや義勇に渋々許して貰えた条件。
「そうですね。剣士を希望していたなら、今ここに私はいません。でも鬼殺隊に入りたいと思った理由は、お世話になった方々に少しでも恩返しが出来ればと思ったからで、まだ皆にお世話になりっぱなしで何も返せていません…」
煉「そういう所が気遣い屋と心配されるところだろうな!恩返しがしたいならば隠の仕事に邁進することだ。ただし怪我の無いように」
考えていることを見透かしているのか、剣士については触れずあえて隠として任務に就くように話す杏寿郎。
「鬼殺隊に入っている今の状況で、もし私が剣術を身に着けたいと言ったならば…」
煉「身を守る為というならば考えよう!剣士になる為ならば承知しかねる!さて、どちらだろうか?」
(やはり見抜かれているのね)
降参とばかりに溜息を吐いた月奈に杏寿郎は苦笑する。鬼殺隊に入るための条件を反故にしても剣士になりたいわけではない。
「私が剣技の才があって剣士だったなら、継子になって杏寿郎様の肩の荷を少しでも軽く出来たのかなと。ふと考えてしまいました」
(継子になるにはただの剣士では駄目だということは分かっているし、そんな才能も何もないのが現実。剣士なんて夢物語だわ)
煉「継子が居ない事は仕方の無いことだと言っただろう!俺はどうも人に教えることが下手らしい、宇髄にも言われたぞ!熱すぎる?すぱるた?とかいうもので人が付いてこれないとな」
「熱血…確かにそうですね。鍛錬になると途端に厳しくなりますよね杏寿郎様は」
蝶屋敷での組手も、そもそも片腕でやらせるのかと杏寿郎を除くあの場に居た全員が思っていただろう。そう思いながらも結局鍛錬を続行する月奈にも問題はあるのだが、煉獄家で当たり前のように鍛錬を一緒にしていればそれが普通なものという認識になってしまうのも致し方のないことなのだろう。
今までも弟子入りした人間は居たが、継子になるには至らずその前に鍛錬から逃げ出してしまったのだ。天元の言葉から想像出来てしまい月奈は笑い声が漏れてしまう。
煉「む?何故笑っているんだ!それ程可笑しな事を言っただろうか?」
不思議そうに首を傾げた杏寿郎に更に笑いがこみあげてくる。