第16章 回復
「いえ、すみません…ふふ。杏寿郎様は人に教えることが苦手なのですね。確かに人によって感じ方はそれぞれですから、杏寿郎様のなさる鍛錬についていけないと思う人もいるでしょう。ですが私は感謝していますよ」
最終選別を突破できたのは、杏寿郎や天元が鍛錬してくれたからだ。それは紛うことなき事実。
「私には杏寿郎様と天元様の扱きが性に合っていたのでしょうね。私と同じように感じる方が継子になればきっと立派な剣士になりますね!」
(私がそういった方を探すというのも一つの恩返しかも?その方が継子になれば万々歳ね!)
煉「継子は必ず隊士から探すという決まりもない。継子にしたい相手を育てて隊士にするということもある。継子だった甘露寺も隊士を目指して煉獄家に来た普通の女人だった。今となっては継子ではなく俺と同じ柱だがな!」
「継子を育てて剣士にする…なるほど。最初から隊士であるという条件は無いのですね!」
あれ?それでは益々探す範囲が広がってしまうのでは、と月奈が考えていると、杏寿郎が覗き込んできた。
煉「よもや、月奈がそこまで継子を探そうとするとはな!では良い情報を一つ教えよう!」
「探そうというかお手伝いが出来ればなぁ、と思っただけで…ん?良い情報ですか?」
煉「そうだ!月奈のように鍛錬に励む精神を持ち、俺の能力を受け継いでくれるであろう継子を見つける方法…」
おぉ!と期待を込めて見つめてくる月奈に、杏寿郎はこみあげる笑いを堪えつつ真面目な表情を作ると衝撃の一言を放ち月奈を赤面させた。
煉「俺と月奈のややこならば全て叶うな!」
真っ赤になって卒倒した月奈を抱え、藤の屋敷へと向かう道中で杏寿郎は自分の行動を後悔した。
ーしばらく口を聞いて貰えないかもしれんな。揶揄い過ぎた。
穏やかな夜を二人でのんびり、と考えていたが結局月奈は湯あたりを起こして寝込んでしまい夜は更けていった。