第16章 回復
先回りしてしのぶに押さえ込まれてしまった月奈の疑問は口から出ることは無く飲み込むことになる。釈然としないながらも、しのぶの表情から本当に聞かない方が良さそうだと納得する。
煉「ところで、鍛錬場に行ったそうだな?皆鍛錬を再開しても良い具合なのか?」
し「いいえ、ですが誰も言うことを聞かないので軽度の鍛錬ならば止む無しと言っただけです。本当は大人しく療養して欲しいのですが…」
ほう、と杏寿郎が視線を巡らすが、月奈含む大人しくしていられない四人は目を逸らしている為視線が合うことは無い。
煉「よし!全員鍛錬場に戻ろう!体の鈍りを戻す軽度の鍛錬をしようじゃないか!」
炭「え!煉獄さんが鍛錬をしてくださるんですか!?」
伊「よっしゃぁぁ!受けて立つぜギョロギョロ目ん玉!」
善「いやだぁぁあ!俺は鍛錬したくないよぉぉ!」
喜び勇んで杏寿郎の後を追う炭治郎と伊之助に引きずられていく善逸は駄々っ子のように手足をばたつかせて抗っているが、炭治郎と伊之助の耳にはその叫びは届いていない。
し「ほどほどにしないと入院が伸びますよー。煉獄さんお手柔らかにお願いしますね?さ、月奈もついて行かないと」
「あ、やっぱり私も参加なんですか?しのぶさんが許可するなら私は鍛錬したいですが…あ、勿論傷が開かない程度に自身で管理しますね」
杏寿郎がそんなことを気にするはずがない。そう言いたげなしのぶの表情に月奈は自分で管理すると約束する。これで傷が開いたら、自分だけではなく杏寿郎がこってりと絞られることになると予想が付いたからだ。
し「無理は禁物ですよ。そうそう、傷が塞がっているのでこれからは包帯での保護は必要ありません。ですから後程傷の具合を確認してからになりますが、今日にでも退院も出来そうということは煉獄さんにもお伝えしてあります」
「え!退院してもいいのですか!?では尚更今からの鍛錬で傷が開かないようにしないとですね!」
そう言って破顔した月奈を笑顔で見送ったしのぶは、自身の仕事をするべく診察室へと向かっていった。
鍛錬場に到着した月奈は、中を覗き込んで「うわぁ…」と声を上げた。とてもじゃないが軽度の鍛錬とは思えない打ち込み稽古をしているのだ。善逸に至っては竹刀を振る度に涙が飛び散っている。