第16章 回復
善「わぁぁ!!ごめん!大丈夫?」
「だ、大丈夫です…お散歩はお付き合いしますのでゆっくり歩きま……ん?」
最後まで言う前に月奈の体がフワリと浮き上がった。目の前の善逸は「ひぇ」と小さな声を上げて青褪めている。
炭「善逸!月奈も病み上がり…あれ?こんにちは煉獄さん!」
伊「なんでぎょろぎょろ目ん玉が月奈を抱えてんだ?」
炭治郎が名前を呼んだことで月奈は自分の腰を持ち上げている手が杏寿郎の手ということに気付く。足元を見下ろすと炎の柄の脚絆が見えた。
「杏…炎柱様、お帰りなさい!えぇと…柱合会議は終わられたのですか?」
脇に手を入れないのは肩の傷に響くと考えて避けたのだろうが、腰を持つのもどうなのか。一瞬そうは考えたが、柱合会議での今後の進退の方が気になる月奈は、持ち上げられたまま背後の杏寿郎に問う。
し「煉獄さん?月奈が戸惑ってますよ、早く下ろしてあげてはいかがですか?」
煉「むぅ、それもそうだな!すまんな月奈!」
ストンと下ろされた月奈は、安堵の息を漏らす。やはり腰を持たれていることに恥ずかしさはあったのだ。
煉「時に、黄色い少年!」
善「ひゃ、ひゃい!!?」
煉「何故月奈が君の腕の中に?」
(見られてたのね、あぁ善逸様の顔が真っ青に…)
「炎柱様、善逸様は私が転びかけた所を抱き留めてくださったのです。…善逸様?」
耳を抑えながら杏寿郎を見つめる善逸と、「そういうことなのか」と何やら納得している炭治郎に月奈は首を傾げる。
(何がそういうこと?…そういえば善逸様は耳が良いって聞いたけれど、杏寿郎様の声が響くのかしら?)
伊「なんだぁ?ギョロギョロ目ん玉は何をそんなに怒ってるんだ?」
煉「む?怒ってはいないぞ!何故だ?」
し「煉獄さん、彼らの特徴は覚えているでしょう?貴方の内心は暴かれたのではないでしょうか。月奈、この三人はそれぞれ嗅覚・聴覚・触覚が優れているんです。つまり既に煉獄さんと月奈の関係性を把握したということです」
伊之助の言った「怒っている」は悋気について感じ取ったのだろう、同様に炭治郎は匂い、善逸は心音で感じとったということ。三人を見ると先程とは違う感情を映した瞳をしている。