第16章 回復
「凄いですね、鬼殺隊の剣士としては頼もしい限りです。が、しのぶさんを怒らせてしまうのはいけないのでは。もう鍛錬を再開してもいい回復状況なのですか?」
苦笑した月奈に、まさかと首を振りアオイは交換した包帯を布袋に入れて口を縛る。肩の傷口は皮膚が覆い出血は無くなったとはいえ、抉られた傷はこれから内部の損傷を自己治癒する段階に入る。先日しのぶより自分のケガの治癒状況を話された月奈は、刀を借りた時の炭治郎を思い出した。
「炭治郎様は私よりも酷いケガだったと思うのですが。勿論他のお二人も重症だったと聞いているので、鍛錬を再開されているなんて…それはしのぶさんが怒るのも納得ですね」
そう言う月奈自身、暇を持て余して体を動かしてはしのぶによく怒られている。人の事を言える口ではないでしょう、とアオイは溜息を吐いて月奈に大判の白い布を一枚渡した。
ア「しのぶ様から、体を動かす時でもなるべく左肩は動かさないように三角巾を使って腕を固定するやり方を教えるよう言われたの。だけど、完璧に固定できるものではないからあまり激しく動かすことを許されるわけではないからね」
それはつまり、少し体を動かすことは許容するということだ。月奈はパァッと表情を明るくすると、いつも以上に真剣に教えて貰う一つ一つの手順をその瞳で頭に記録していった。
カ「月奈?師範から出歩く許可は貰ったの?」
「あ、カナヲちゃん!そうなの、体を動かす時は左腕はこの状態にしておくことと、激しい鍛錬はしないっていう条件の上で、だけれどね」
蝶屋敷に備え付けられた鍛錬場に顔を出すと、しのぶに怒られていると噂の三人とカナヲが居た。どうやら三人の鍛錬に付き合わされているようだ。いや、この場合は機能回復訓練が正しいのか、と月奈は机の上に並べられた多数の湯呑みに目が留まり思い直した。
入口から鍛錬場をこっそりと覗いただけでカナヲに見つかり、声をかけられたことで他の三人も入口に振り向き中に入るよう促してくる。断る理由もないので、見学しようと中に入った月奈は剣士の回復訓練を見て驚くしかなかった。
善「最初はあの臭い薬湯をかけられ続けてさぁ、今はなんとかあの速度についていけるくらいにはなってきたよ」