第16章 回復
「熱が下がれば退院出来るって聞いていたのに…」
そう呟いた月奈は未だ蝶屋敷で療養中だ。遊廓での戦闘から2週間が経ち、傷の痛みも徐々に落ち着いてきたが故なのか暇を持て余してしまう。
ア「自分で包帯が巻けるならいいと炎柱様はお話されていたじゃない。退院出来ないのは自分の不器用さのせいでしょう」
そう言われ「ぐぅ」と唸るしかない月奈。一人では上手く巻けないのは仕方のない話だとアオイは包帯を交換しながら思う。
ア「自分で簡単に治療ができるなら蝶屋敷も必要ないでしょう。仕方の無いことよ、こうやって見て学んだことは隠の業務で活かせると思えば、今は学ぶ時間として割り切るのも一つかもしれないわね」
何だかんだとぼやきながらも毎回の包帯交換の時には、モノにしようとその目で観察している月奈。時には、片手でもどうすれば包帯が固定できるのか等を考えて試す事も提案してくる。貪欲に学ぼうとする姿勢はアオイは勿論、しのぶさえも驚嘆させている程だ。
「そういえば、しのぶさんは定期健診か何かですか?今日はまだ会ってないのですが」
ア「あら、話してなかった?今日は柱合会議でしょう、炎柱様も出席されているはずよ」
遊廓に任務で出る前に杏寿郎の部屋で見た文を思い出して月奈はハッとした表情をする。
(そういえば日時が書いてあったわ。こうも入院生活が続くと、一体今日が何月何日なのかもわからなくなって困る)
「そういえばそうでしたか。杏寿郎様も天元様も今後のお話をなさるのでしょうね」
ア「そうでしょうね。特に音柱様については片腕も無くしているし、引退も…そういえば、一緒に遊郭の任務についた三人も音柱様の進退について気にしてたわね」
「あぁ、炭治郎様達ですか?確かに一緒に任務に就いていたので気にするでしょうね。杏寿郎様のことも気にしていたようですし」
あの三人、炭治郎・善逸・伊之助は無限列車の任務で炎柱の杏寿郎と一緒に任務についていた。立て続けに任務に同行した柱が二人引退するかもしれない事態なのだ、気にするなと言う方が無理だろうと月奈は思う。
ア「気にしているからこそ、しのぶ様に怒られても鍛錬を止めないんだって伊之助さんが言っていたわ。そんな風に仲間を失わないように自分たちが強くなるんだって、すごいわね」