第15章 覚悟の始末方
煉「月奈が任務中に負傷、蝶屋敷へ搬送されたと連絡を受けて向かった次第です。宇髄及びその他隊士も多くが負傷した任務でした」
槇「そうか。容態は?」
煉「鬼に肩の肉を一部齧り取られた状態です。月奈自身はケガによる発熱で入院していますが、詳細を聞くことが出来ました」
蒼樹については語って良い話ではないような気がした杏寿郎は気付かれないように伏せつつ詳細を話す。必要であれば後日、本人が蒼樹について話すだろう。
気付くとちゃぶ台には湯呑みが並べられ、千寿郎も傍に座っている。月奈の容態を聞いたからか少し顔が青褪めているように見える。
槇「そうか。しかし、鬼の首を切ったとは驚いたな。稀血の血肉を喰らった鬼は力が増す、その前に切ったとしても随分と肝が据わっているな」
千「兄上、月奈さんはいつ頃退院されるのでしょうか?一部を…齧り取られたということはやはり長い入院になるのでしょうか?」
煉「いや、発熱さえ落ち着けば退院してもいいと胡蝶は言っていたが…」
チラリと千寿郎を見てから槇寿郎に向き直った杏寿郎は、退院した場合の話を切り出した。
煉「消毒を行った後、首から胸部にかけて包帯で保護すると説明を受けました!治療の手順は父上はもちろん俺や千寿郎でも覚えられるものとは思いましたが…」
槇「それは…さすがに誰も出来んな」
少し困ったように頭を掻いた槇寿郎は、杏寿郎の言いたい事を察した。うら若き女人の肌を見ることはいくら治療といえど気が引ける、それは恋仲になった杏寿郎も同様の考えなのだろう。
煉「ですので、月奈が自分で治療出来るようになるまでは退院出来ないかと」
千「退院はしばらく出来ないのですね…」
しょんぼりとした千寿郎に、杏寿郎は笑いかけると「面会は出来るぞ」と頭を撫でてやる。見舞いは毎日でも行くつもりだが、柱合会議の日だけはそちらを優先しなければならない。
千「明日にでも早速お見舞いに参りましょう!父上も!」
槇「お、俺もか?考えておく…」
見舞いに行けることが分かり、千寿郎は表情が明るくなると夕餉の用意をしに台所へと向かっていった。槇寿郎は元柱として扱われることが苦手なようで、鬼殺隊士が多くいる蝶屋敷に行くことを躊躇っているようだった。