第15章 覚悟の始末方
煉「宇髄は確かに、気付いているかもしれん!遊郭の潜入の時から俺の気持ちの機微に敏かったからな」
し「なるほど、分かっていたので月奈を潜入させたのでしょうか。宇髄さんも中々に悪い事を考えますね」
そう言ったしのぶは、納得納得と笑って月奈の肩を優しく抱いた。悪い事?と月奈は考えるも思い当たらない。
し「煉獄さんが花街に行くという噂も聞いたことがありませんでしたから、そういう場が苦手というならば遊郭に潜入することは気が進まなかったのではありませんか?」
煉「う…しかし任務だからな!私情は不要、粛々と任務を遂行…」
月奈が潜入したと分かるまで不貞腐れていた自分を思い出した杏寿郎は言い淀み、しのぶは「思い当たる節があるようですね」とクスリと笑う。
し「月奈が遊女役と分かってからは精力的に見世に通ったのでは?まさしく宇髄さんの読み通りだったと」
年下のしのぶに翻弄されて顔色をくるくると変える杏寿郎に月奈は珍しい物を見る視線を向ける。いつもハキハキと正直な発言をする杏寿郎が、これほどまでに狼狽えること自体珍しいからだ。
「しのぶさん、杏寿郎様が狼狽えているのでその辺りでご勘弁下さい」
し「もう少し他愛もないお話をしたかったのですが、残念です。でも一つ安心しました」
月奈の頭を一撫でして廊下に向かうしのぶに、「安心?」と杏寿郎は首を傾げる。
し「月奈の肌を見ないようにしているということは、まだそのような仲にはなっていらっしゃらないと。そういうことですよね?安心しました、それでは」
ニコリと微笑んで部屋を後にしたしのぶは、少し揶揄い過ぎたかしら。とも思ったが、楽しかったからまぁいいかと思い直す。二人が恋仲になれたことが嬉しくて、調子に乗ってしまったのだ。
煉「…胡蝶は本当に突飛な発言が過ぎるな!月奈、疲れてはいないか?話はまた後日でも俺は構わんぞ」
「あぁ、はい。大丈夫です、杏寿郎様こそお時間よろしいのですか?それならば今日お話ししたいです」
熱が下がっていない証拠だろう。まだ少し顔が赤い月奈をベッドに横にさせると傍らの椅子に腰かけ、話を聞く態勢で杏寿郎は月奈に「では聞こうか」と微笑んだ。