第15章 覚悟の始末方
立ち止まって庭を見つめていたからか、千寿郎が横に並び声を掛けた。
「焼き芋美味しかったなぁと先日のことを思い出してました!また焼き芋しましょうね」
千「そうですね!是非!月奈さんが任務から戻ったらやりましょう」
微笑む千寿郎につられて月奈も微笑んで、杏寿郎の部屋へと向かう。杏寿郎は数日後に控えた柱合会議までは、自宅療養の身。そうはいっても回復力はさすが柱というべきか、体力が有り余っているようで毎日の鍛錬は欠かさずに行っているようだ。
煉「もう出る時刻か?」
部屋に入ると、読んでいた本から顔を上げてこちらを見る杏寿郎。月奈は今から出発することを話す。
「任務とは別に、清花さんと話す時間があれば詳細を聞いてきますが…ここ数日あの男が花街に姿を見せてないと文に書いてありました」
煉「うむ、俺の文にも書いてあったな!動きが変わったことに注意して任務にあたるようにな。何があるか分からん、杞憂で終わればいいが…」
「細心の注意を払って任務を遂行してきます。今回は天元様や炭治郎様達がいらっしゃるので、きっとすぐに帰還できると思っています。戻ったらまた焼き芋しましょうね!」
焼き芋という単語に表情を明るくした杏寿郎は、少年のように幼い笑顔を見せる。その表情のまま手招きをされ杏寿郎に近付くと唇が軽く触れる。
「…杏寿郎様が居ない任務なので少し緊張します」
苦笑した月奈を抱き寄せると背中をゆっくりと撫でてやる。月奈が力を抜いて杏寿郎の肩に頭をもたせかけると、杏寿郎の髪を纏める髪紐が目に入った。
「髪紐、使ってくださってるんですね。嬉しいです」
煉「月奈から貰ったものだからな!気に入っているぞ。ありがとう」
好いた人間に贈り物を渡すことは初めてだったが、喜んで貰えて月奈はとても嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。
「それでは行って参ります!」
体を離して頭を下げると、月奈は部屋を後にした。
千「では、月奈さんお気をつけて。早い帰還を願っています」
「ありがとうごさいます千寿郎さん!」
カバンを背負い直し、顔布と頭巾をつけた月奈は目元を緩ませると手を振って煉獄家を出発し、任務地花街へと向かった。