第15章 覚悟の始末方
ここ数日、植木屋の男を見掛けない。
清花の手紙にはそう綴られていた。月奈がときと屋から去った事に気付いたのだろうか、それとも何かよからぬことが起ころうとしているのでは?とつい悪い方向に考えてしまう。
(嵐の前の静けさ、でなければいい。ただ花街に通わなくなっただけでしょ)
そもそも、生家はもう無いうえに身寄りも無い。そうなれば月奈がどこに消えたかなんてわからないはずだ。何かが起きることなど有り得ない。
「そうよ。ここに居ることも知り得るはずがないもの」
千「月奈さん?そろそろ出る時刻ですが、準備出来ましたか?」
廊下から千寿郎の声が聞こえ、月奈は上着とカバンを持って部屋を出る。今日から数日、花街での任務に出ることになったのはつい先日のこと。
千「退院して数日で任務なんて、本当に大丈夫ですか?」
「私はそれほど酷いケガではなかったから、駆り出されちゃうのは仕方ないと思います!それに、剣士で任務にあたっている方々は皆様お会いしたことがある方ばかりですから大丈夫ですよ」
充分酷いケガだったような気がします、と千寿郎は困った表情をしているが、聞かないフリで槇寿郎に部屋に入り任務に出る挨拶を済ませる。今回は別の隊士達が潜入していることから、月奈は完全に隠としての任務になっている。
(また遊女で潜入なんて話だったなら、きっと槇寿郎様は大反対されるんだろうなぁ)
槇「気を付けて任務を遂行するようにな。あくまで隠としてな」
(いや、そもそも花街とか隠とか関係無く飛び出していく私を気にしているのか。任務の内容ではないのかも)
「はい。行って参ります!」
頭を下げて部屋を出ると、廊下には千寿郎が待ってくれている。庭を見ると、枯葉が風に吹かれ地面を転がっていくのが見て先日、街に行った際に買ったさつまいもで焼き芋をしたことを思い出す。
槇寿郎は縁側に座って御礼に渡したお酒を飲み、杏寿郎は大きな声で「わっしょい!」と言いながら焼き芋を食べていた。火の番をしつつも千寿郎と月奈も熱々の焼き芋を食べて杏寿郎につられて「わっしょい!」と言っていた。
(何故わっしょいと言うのかは不明だけれど、煉獄家では普通のようだったから驚いたなぁ)
千「月奈さん?どうしたんですか」