第3章 崩壊
蝶屋敷は病室や診察室、回復訓練を行う道場も備え付けられており、敷地的にもかなり広い。
月奈は走りながらも視線を巡らせ、目的の物をみつけようとしていた。
ーどの部屋にもあるけど…でも人がいる部屋はダメだ。誰もいない部屋はないの…?
煉「水橋少女!待つんだ、病み上がりで走ってはいけない!」
後ろから聞こえる声にチラリと視線を向け、煉獄の姿を確認した月奈は、唇を噛んだ。
「!あった…!!」
空室になっている病室に飛び込み、目的の水差しを手に取る。
ごめんなさい、と呟いてから、机に叩きつけガシャン!と音を立てて割れたガラスの破片を握りしめると、熱いような痛みを感じた。
煉「…何をしている!!?」
し「月奈さん!…血が出ていますよ、痛いでしょう。治療しましょう?」
穏やかな微笑みを作り、しのぶは月奈へと近付いていく。
月奈の背後にある窓から見えた外は、もう日が暮れて月が浮かんでいた。
「これくらい痛くなんてないですよ。父様も母様も…月哉も…きっともっと…痛かったんだから…」
ポタリと床に落ちる血。ガラスを握る手に力がこもっていく。
「…私のせいで鬼が来たのに、皆私を守って死んでいった…」
煉「水橋少女のせい…?何故そう思う?」
しのぶの足がピタリと止まる。
し「まさか…」
「…私の血って鬼の好物みたいです」
ふふ…と笑う月奈は月明りを受けて、狂気じみていた。